遊民悠民(ゆうみんゆうみん)

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ありとあらゆる情報が溢れるいま、役に立つ情報が見つけにくい。
20代から60代までの「遊民悠民」メンバーが、「遊ぶ」「暮らす」「食べる」をテーマに
さまざまなモノを比較し、レポートしていきます。

あそぶ

花満開の街全体が美術館!?

青森の二日目は十和田へ。目的は十和田湖でも奥入瀬でもなく『十和田市現代美術館』だ。

十和田市現代美術館
http://towadaartcenter.com/web/towadaartcenter.html
◆そこは“日本のみち100選”の『駒街道』

なんと見事な桜並木(展望用に公開されている市役所4階より撮影)

青森から十和田市までバスで1時間半。前夜、通りがかりにふっと入ったバーの女店主から「青森は今、桜が満開!こんな機会はなかなかないから、ぜひ弘前の桜を見に行くべき」と強く勧められた。それが現代美術館のある十和田市の官庁通りに来て見れば、見事な満開の桜並木に迎えられ、「弘前?もう、ここで十分」とすっかり満足してしまった。
旅先のことを調べる暇もなく、ただただ、美術館を目指してきた私たちだが、ここ十和田市の官庁通りは,“日本のみち100選”に選ばれた景観だという。また、この時期は桜の名所としても知られる。なんだか一番ラッキーな時期に来たわけだ。

美術館に入館し、荷物を預けて、まずは桜並木を散策することに。すると、桜の下で、等身大の馬の像など、数多くの馬たちに出会うことになった。
十和田市は古くから名馬の産地で、戦前は陸軍の軍馬の補充部が設置され、馬の糶市も盛んだったという。
そうした歴史は、官庁通りの通称『駒街道』にも残されている。

えっ、桜の下に馬の群れが!?

 

まるで、生きているようです。

 

一頭だけの離れ馬?もいました。

 

ポストの上にも馬が。

 

桜散る道には、蹄鉄が。

 

ステンレス製のベンチにも、桜が映り込んできれい。

 

人力車もあります。人が少ないから快走できますね。

官庁通りに並ぶ病院のカフェでランチを食べ(花の中にいるようなベランダ席もあり!)、友人と「ここの病院なら、見舞客も楽しい」などと言い合いながら、すっかり地元客気分で、この春2度目のお花見を満喫したのだった。

◆大っきなおばさんに会いに行く!?

さて、いよいよ当初の目的である現代美術館へ。
十和田市の新しいまちづくりの一環「Arts Towada」計画の中核施設として2008年に開館した美術館だ。
それぞれのアートの展示室が独立・分散して配置され、ガラスの通路でつながったユニークなつくり。また、屋外(というか、官庁通りの広場)にもアートが展示され、官庁通りと一体になった、空間的にも開かれた美術館となっている。
アートを見ながら,街を散策するような感覚だ。
そこに展示された現代アートとは…

独立した展示室(キューブ?)がガラスの通路でつながって。外から覗ける展示室もあり、街に開かれたつくり。

前夜、前述の青森のバーで「明日は十和田の現代美術館へ」と話すと、店主はもちろん、客もみな「ああ、あの大っきなおばさんの…」という反応。これはロン・ミュエクの作品『スタンディング・ウ-マン』を指していたのだと、展示室に入ってわかった。
私は2008年に金沢21世紀美術館で、ロン・ミュエク展を見ているので、他の人よりは驚きは少ないと思うが、大人の2.5倍ほどの高さの女性像には、みな、度肝を抜かれるに違いない。
リアルさも半端ではなく、皺はもちろん手に浮いた血管まで、生きているようなのだ。白い展示室で、この巨大な「おばさん」と対峙すると、不思議の国に迷い込んだようで、強いインパクトを覚えるはずだ。

ロン・ミュエクとは? http://bit.ly/fMtxQa

金沢21世紀美術館 ロン・ミュエク展

http://www.kanazawa21.jp/exhibit/mueck/index.html

美術館前の「フラワー・ホース」(チェ・ジェンファ作)も、シンボルのひとつ。

 

これも屋外展示の「アッタ」(椿 昇作)

 

官庁通りを挟む美術館の向かいの広場には、草間弥生の「愛はとこしえ十和田でうたう」他の作品が展示

◆街を使ったインスタレーション

特別展として、栗林隆の作品展が開催されていた。
栗林の作品は美術館だけでなく、まちなかにも展示。
街散策の楽しみを拡げてくれる。

やめてしまった商店のシャッター穴を覗くと…。

 

空きになった店舗の中で、映像が映し出されている。シャッター穴からしか、のぞくことができない。

 

栗林 隆のヤタイ・トリップ・プロジェクトの一環。

特別展 栗林 隆 
http://towadaartcenter.com/web/exhibition.html

◆美術館に観光案内コンシェルジェ!?

さて、美術・博物館にもネットを使ったオンラインのマーケティング戦略は必要不可欠になってきている。ブログ発信はもちろん、ソーシャル•ネットワーキング•サービスを使い始めた美術館もここ数年で目立ってきているようだ。

ここ十和田市現代美術館でも、ブログはもちろん、公式ツイッターも公開中だ。そのブログで以下の記事を発見。
「十和田市現代美術館には全国各地から旅行者がたくさん訪れます。最近流行りの(?)アートツーリズム…ということでしょうか。
特に十和田湖や奥入瀬渓流の自然を満喫しに訪れる観光客が十和田市現代美術館に立ち寄っていただいています。
ですからこれまでも受け付けやカフェで、最寄駅までの交通手段についてや近くのレストラン、あるいは周辺施設の案内などを尋ねられる方が多く、今年実験的にその専門スタッフを置いてみることにしてみました」
おっ、これはちょっとした観光案内コンシェルジェってこと!?
行った時点では知らなかったけど、これはうれしい。アートを楽しんだら、近場で気の利いた食事もしたいし。見どころも、「美術館の人が紹介してくれるなら、ちょっと違うかも」と期待してしまう。

今回、美術館目的で旅してきたズバリ、アートツーリズム族の私としても、大歓迎の企画。受付での対応だけでなく、そこでの情報をブログでも発信いただければ、旅してくる人により親切で、美術館を魅力的に見せるのではないだろうか。

受付でもらったパンフ。右の「Arts TowadaGuide」の方には、美術館以外のポイントも紹介されている。

パンフ中面、左下に「大っきなおばさん」(笑)。鑑賞者も映っているので、その大きさがわかる。

青森の旅2日目も、桜とアートですっかり満足した私たち。
少し早いがホテルに入って、ゆっくりしようということに。
ワンデイワンテーマの旅は続きます。

よろしければ、青森の旅1日目もご覧ください。
みちのくアート旅①
8.5mの“あおもり犬”に出会った。

安里道行
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