遊民悠民(ゆうみんゆうみん)

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ありとあらゆる情報が溢れるいま、役に立つ情報が見つけにくい。
20代から60代までの「遊民悠民」メンバーが、「遊ぶ」「暮らす」「食べる」をテーマに
さまざまなモノを比較し、レポートしていきます。

あそぶ

今年も南座、顔見世へ!!

12月の声を聞けば、京都は南座の顔見世。例によって友人の手配で、初日翌日の12月1日(土)の昼の部を見ることに。ここ数年、恒例のお楽しみだ。

南座(松竹株式会社HP):http://www.shochiku.co.jp/play/minamiza/

◆『出雲の阿国』にご挨拶して、いざ観劇!

歌舞伎の発祥は、京都四條河原で出雲の阿国が行ったかぶき踊りだ。その地にある南座は、江戸時代から続く日本最古の劇場(江戸時代、四条河原には7つの芝居小屋が存在したが、火事で幾度も焼失し現在は南座のみが現存している)。歌舞伎発祥の地で、江戸期から続く『顔見世』を見られるのだから、歌舞伎ファンには応えられない。
南座西側には『阿国歌舞伎発祥の碑』があるのをご存じだろうか?阿国のかぶき踊りに思いを馳せて(元祖歌舞伎はどんなだったろう?)気分を高めて、いざ、観劇!

▲南座へ向かう和服の女性も風物詩。

 

▲まずは、南座前で『まねき』看板を をじっくり見物。

 

▲四条通を歩けば、漬物屋の店頭に見事な蕪のディスプレイ。師走感たっぷり。南座の売店でも土産に千枚漬けが売られていた。

 

▲「漬物寿司」を幕間につまむのもいいかな?と下見などして…。

 

▲南座の西側に、阿国歌舞伎発祥の地の碑。阿国に挨拶してから劇場へ入ろう!

顔見世:http://bit.ly/QZEvhH
出雲の阿国:http://bit.ly/bFmVgN

◆今年の話題は、やっぱり勘九郎の襲名

昼の部、前半は『佐々木高綱』(ささきたかつな)、『梶原平三誉石切』(かじわらへいぞうほまれのいしきり)と続く。いずれも源平絡みの物語で、「今年はNHKの大河ドラマが『清盛』だったから?」と思ったりした。
『佐々木高綱』では、先月の『永楽館歌舞伎』でファンになった、ラブリンこと愛之助さんが、馬飼の役で出演。『梶原~』では、七之助の娘役が可憐なこと。
そして後半。六代目襲名で話題の勘九郎が『寿曽我対面』(ことぶきそがのたいめん)で、曽我の五郎を演じる。『寿曽我対面』は吉例に欠かせない寿ぎの演目で、去年の顔見世でも上演された。様式美満載の舞台を、去年と違う役者で見るのも、また楽しい。
荒事の曽我の五郎(勘九郎)に、和事の十郎は時蔵さん。五郎と十郎は本当に対比の妙だ。ともに赤の着物に水色の裃の鮮やかな衣装。兄弟の敵役の祐経は仁左衛門さん。黒の着流しに大胆な金の模様で、渋かっこいい! 豪華な衣装の傾城も並ぶ舞台は、きらびやかで夢の世界のよう。その中で、五郎が長い袴の裾を蹴り上げて、カッと見得を切る様にしびれる。

▲勘九郎の襲名を寿ぐ幕がかかる。

▲曽我の五郎の衣装を着けた勘九郎。荒事の見得たっぷりの役柄。華やかで襲名にふさわしい。

▲劇場内には各界からの襲名祝いの飾り絵馬。幕間に見るのも楽しい。

▲襲名記念グッズもいろいろと。勘九郎切手も売られていた。

『寿曽我対面』:http://bit.ly/if75b5
六代目中村勘九郎(俳優名鑑):
http://www.kabuki.ne.jp/meikandb/meikan/actor/62

勘九郎の襲名興行は、先に9月の松竹座を幕見した。文楽や歌舞伎に出てくる狐が大好きな私は、どうしても勘九郎の『雨乞狐』が見たかったのだ。
雨乞狐が、『義経千本桜』(よしつねせんぼんざくら)の源九郎狐の子孫という設定だから、なおさら見ずにいられない。野狐、雨乞い巫女、座頭、小野道風、狐の嫁入りを一人で次々と踊り抜く勘九郎に、感動の拍手を送ったのだった。

▲勘九郎の六変化が見事だった『雨乞狐』(九月、大阪松竹座)

さて、顔見世の話に戻ろう。昼の部は10時半開演~4時終焉。昼の弁当は、やはり南座内で購入することに。 京料理花萬のお弁当は、薄味で大変おいしかった。

▲昼と夜の上演演目にちなんだネーミングの弁当。忠臣蔵弁当、曽我弁当。

◆伝説の大夫、夕霧の話がお菓子になった!?

昼の部の締めくくりは、『廓文章吉田屋』。大阪新町に実在した名妓、夕霧太夫が若くして亡くなり、その死を惜しんだ人々の思いに応えるように、夕霧を主人公にした浄瑠璃・歌舞伎が数多く作られた。今回上演の『廓文章』(くるわぶんしょう)、通称吉田屋もそのひとつ。夕霧と、愛人藤屋伊左衛門の物語だ。

▲南座正面に掲げられた、『廓文章』の絵看板。

師走の吉田屋(遊郭)に紙子の着流しに深編笠姿の、尾羽打ち枯らした藤屋伊左衛門が訪ねてくる。夕霧と馴染みを重ね,お大臣遊びを尽くした結果、親に感動され、借金を背負った身。それでも久々、夕霧の顔が見たいと吉田屋主人に声を掛ける。主人は快く伊左衛門を座敷に上げ、夕霧を待つように言う。他の客の座敷にいる夕霧を待つ間、じれてふて寝をする伊左衛門。恋しい夕霧が表れても、嫉妬の恨み言、すねる姿は、和事の典型とも言われ、人間国宝:藤十郎さんが、扇雀さんの夕霧相手に、見事なじれっぷりを見せてくれる。
二人の痴話げんかのうちに、伊左衛門の藤屋から「勘当解かれた!」の知らせと、夕霧を身請けするための千両箱が届けられ、「めでたやな」で締めるお祝儀狂言となっている。
劇場内では、この演目にちなみ、井筒八つ橋本舗の上菓子『夕霧』を販売。
土産のほか、幕間に味わう個売も行っていた。『夕霧』は、伊左衛門の編笠をモチーフに昭和二十二年に井筒八つ橋本舗が生み出したお菓子。その普及版として売り出されたのが、つぶあん入り生八つ橋『夕子』だそうだ。

▲『廓文章』にちなんで誕生した名菓“夕霧”。劇場内でも食べられる。

『廓文章 吉田屋』(歌舞伎への誘い):http://www2.ntj.jac.go.jp/unesco/kabuki/jp/5/5_04_11.html

井筒八つ橋本舗HP:http://www.yatsuhashi.co.jp/
夕霧太夫:http://bit.ly/Vnmoj6

◆アフター顔見世は、ホテルのバーへ

「寿曽我は、やっぱり華やかやったね」などと言いながら、鴨川に添って御池まで歩く。冷たい京都の風も、観劇にほてった身には気持ちいい。ホテルのバーで、アフター顔見世といきましょう。
明るいうちのバーの、まだ澄んだ空気とゆったりしたソファが落ち着ける。「口上は夜の部だよね」「夜の忠臣蔵、仁左衛門さんの早野寛平! 腹切りの段が見たい! 11月の文楽で見たけど…」などなど、顔見世話に盛り上がりつつ、グラスを傾けるうちに、バーも夜の灯りとなっていく。

▲鴨川添いにも阿国の像が。「顔見世良かったよ」と声を掛け行く。

▲夕方の明るい光が差し込むバー。

▲顔見世話に盛り上がるうちに、夜の顔になるバー

▲ホテル階段の踊り場で生演奏。この日はハモニカでのクリスマスソング演奏だった。

京都ホテルオークラ(バー:チッペンデール):http://bit.ly/QZGiDj

安里道行
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