遊民悠民(ゆうみんゆうみん)

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ありとあらゆる情報が溢れるいま、役に立つ情報が見つけにくい。
20代から60代までの「遊民悠民」メンバーが、「遊ぶ」「暮らす」「食べる」をテーマに
さまざまなモノを比較し、レポートしていきます。

たべる

「鴛鴦(おしどり)火鍋」ってご存じですか? 

すでに桜がちらほら咲いているが、まだまだ肌寒い夜もある。

そんな夜の我が家の定番料理といえば、しゃぶしゃぶである。シンプルな昆布出汁に野菜・豆腐・葛切りなどの食材を煮込み、ゴマタレやポン酢でいただく。

日本式のしゃぶしゃぶは、出汁に余計な味付けがなく、食材の旨味を最大限に生かすのが特徴。でも、時々やはり中国の火鍋が大変懐かしく思われ、食べたくなる。つい最近も、大阪の心斎橋にある中国火鍋専門店「小肥羊(ショオフェイヤン)」に行ってきた。

▲白と赤のスープ。(左)鶏肉・(右)ラム肉。

▲白と赤のスープ。(左)鶏肉・(右)ラム肉。

中国では、火鍋といえば「四川火鍋」(または「重慶火鍋」)が一番有名である。家庭でもよく食べられている。市販の味付けスープを鍋に入れ、沸騰したら肉や魚、キノコ、豆腐、白菜などお好みの食材を鍋で煮込み、ゴマタレとすりニンニクでいただく。

「四川火鍋」が美味しいかどうか、その味の決め手は鍋のスープ「鍋底」(グオディ)となる。グオディとは、スープの味付けのこと。有名な火鍋専門店はスープの作り方や味付けに独自なコツがあり、秘伝とされている。中国で最も人気なのは「紅湯(ホンタン)の麻辣(マーラー)スープ」だ。

▲激辛のもと。真っ赤なスープ色から辛さが伝わってくる。

▲激辛のもと。真っ赤なスープ色から辛さが伝わってくる。

日本風のしゃぶしゃぶと対照的に、山椒、唐辛子などの調味料をたっぷり入れた真っ赤な出汁が定番である。写真の真っ赤な出汁色から、その辛さが想像いただけるだろうか。辛すぎて体に悪い?と思う方もいるかもしれないが、実際は数十種類の漢方や香辛料を使用している。素材のエキスをブレンドしたスープは医食同源思想の中国人ならではの健康食となっている。

現在、専門店で提供される火鍋は、中央を太極の「陰陽」に見立てて仕切られた金属製の丸鍋である。中に、白湯(パイタン)と呼ばれる鶏骨と豚骨を煮詰めた白濁のスープと、唐辛子や山椒や漢方薬など調味料をたくさん入れた辛い味付けの紅湯(ホンタン)の麻辣(マーラー)スープの 2種類を別々に入れて煮立て、好みの食材を好みのスープに入れて煮ていただく。

▲赤と白の対比が食欲をそそる「鴛鴦(おしどり)火鍋」

▲赤と白の対比が食欲をそそる「鴛鴦(おしどり)火鍋」

なぜこのような形の二色鍋が生まれたのか、その由来には、何と政治が絡んでいる。

1983年に北京で開かれた中国政府主催の第一回料理コンクールで、重慶出身の料理人、陳志剛(チン ジガン)が、地元に愛された名物 “重慶火鍋”を出すことになった。しかし、北京の人たちは、その辛さを受け入れてくれるだろうか。どうすれば、激辛スープが好きな人と苦手な人が、ひとつの鍋を楽しめるだろうか。色々悩んで考えた結果、「鴛鴦(おしどり)火鍋」(ユアンヤン フオグオ)と呼ばれる二色鍋が誕生した。「重慶東方造船工場」に依頼し、中央を太極の「陰陽」に見立てて仕切られた銅製の丸い「鴛鴦(おしどり)火鍋」(ユアンヤン フオグオ)を作ってもらった。

コンクールの後日、北京の四川飯店でこの二色鍋がふるまわれ、鄧小平を初め、当時の中央政府要員が招待された。四川省出身の鄧小平は、北京で懐かしい激辛グルメ「火鍋」を食べることができ、大いに驚き、非常に喜んでいったらしい。以来、この二色鍋が重慶及び全国にも浸透していった。

辛いものに得意であれ、苦手であれ、みんながひとつ鍋を囲みながら楽しめるのも、陳志剛(チン ジガン)の発明のおかげだ。中国本場の味の火鍋を食べてみたい方は火鍋専門店「小肥羊」にぜひ一回行ってみてほしい。

 

お店のホームページhttp://www.hinabe.net/

お店のホームページ
http://www.hinabe.net/

 

英海(えいみ)

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