遊民悠民(ゆうみんゆうみん)

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ありとあらゆる情報が溢れるいま、役に立つ情報が見つけにくい。
20代から60代までの「遊民悠民」メンバーが、「遊ぶ」「暮らす」「食べる」をテーマに
さまざまなモノを比較し、レポートしていきます。

たべる

完全なMADE IN JAPANコーヒーへの挑戦

大阪空港から1駅。蛍池駅の付近の住宅街にある「DECOBOCO farm kitchen」は自家焙煎のスペシャルティコーヒーを楽しめるカフェ。店内では豆の個性に応じて抽出方法を工夫したこだわりのコーヒーのほか、手作りのスイーツや軽食をいただける。

「店は若い人には入りにくいようにしているつもりです。うわべだけでなく、味の分かる大人に来てほしいですから」。そう話すオーナーの宮出さんは、徳之島で国産のコーヒー栽培を手がける数少ない生産者のうちの1人でもある。まだ店で出せるほどの豆は栽培できていないが、いずれは自分で育て、収穫した豆を焙煎して提供する。つまりコーヒーの6次産業をMADE IN JAPANで、という計画を推進中なのだ。

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「DECO & 宮出珈琲」のオーナー宮出さん。

 

もちろん日本でのコーヒー栽培は難しい。気候や風土の壁、そして毎年の台風が牙をむく。「かれこれ5年間かけてプランテーションで栽培してきたんですが、2012年の台風で全部やられました。台風を免れたとしても、日本の気候だと夏に葉焼けして、結局ほとんど成長しない。実際これまで収穫できたのは、カップ数でやっと150杯程」。ただ、化学肥料を使えば何とか克服はできるそうだ。ケミカル農法自体、特別なものでもなく、実際ブラジルなど主だった生産国でも、ほとんどの農園がケミカルを採用している。

「でも僕は使いたくない。まず、日本人ってオーガニックが好きでしょ?せっかくの国産ですから、日本らしいものを作りたい。あと、ケミカルを使っても日本ではそれほど美味しいコーヒーができないと思う。ましてや適した気候で、さらにケミカルの恩恵を受けた豆になんて太刀打ちできない。実際に、既に国産を標榜する豆も出回ってはいるけど、まぁ美味しくない(笑)。珍しいだけっていうのは僕が作りたいコーヒーじゃないんです」。

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2012年の台風被害で倒木したコーヒーの樹。

 

そんな宮出さんだが、実はとりわけコーヒー好きというわけでもないそうだ。そもそもは農業が好きで、高クオリティな6次産業をカフェで実現するために店を始めた。「最初は紅茶と迷っていました。でも国産紅茶は作っている人がたくさんいたから。それに僕は紅茶が好きで何でも美味しく飲んでしまう。一方でコーヒーは雑味に敏感になってしまうんです」。美味しいものを追求するのだから、センサーが鋭利になる方を。普通は好きな方を選ぶものだが、彼の場合はあえて逆の選択をしたのだ。

「だからコーヒーは僕にとって仕事であり、農作物としての興味が先立つものですね」。自家焙煎や抽出の研究に余念がないのも、“国産”というハンデを抱えた豆から最大限に美味しさを引き出すためだという。「日本ではいくら良い豆ができたとしても、焙煎も抽出もパーフェクト以上に極めて、やっと満足できる1杯を淹れられるくらいでしょうから」。

DECOBOCO farm kitchenのコーヒーは、苦手だという人でも飲めてしまうほど嫌味がなく、すっきりとした味わいで美味しい。

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自家焙煎のスペシャルティコーヒーを抽出。

抽出器具の研究にも熱心で、豆に合わせた抽出方法でコーヒーを淹れる。

 

「美味しいコーヒーの淹れ方って本はたくさんあるけど、日本で美味しいコーヒーを育てる方法なんて本はない。だから面白いんです」、と宮出さん。悪戦苦闘の6年間の経た彼が、美味しい国産豆の栽培方法としてようやく可能性を見出した農法がある。森の中でコーヒーが自生できるような環境を整えてやるフォレスト農法だ。

「結局ケミカル+プランテーションってブラジルで始まった農法。日本にはどうも適してない。一度原点に戻してみようか、と思って始めたのがフォレスト農法です」。彼の知る限り、日本では他に2人の生産者が誰に教わるでもなく、自力でこの農法を始めたのだとか。「まだ試験段階だから情報交換もしていないんですけど、おそらくやっていることは同じ。森の中に2000本ほどの樹を植えて昨年から様子を見ていると、葉の色にしても全然違います。他の2人もコレだ!って思っているんじゃないですかね。というか日本ではフォレスト農法じゃないと美味しいコーヒーは作れない」。

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コーヒーを森で半自生させる、フォレスト農法への挑戦。

 

収穫は一番早くても4年後、安定させるには10年くらいは必要だという。まだまだ先は長い。「日本の森で自生する美味しいコーヒーって夢がありますよね。いずれは森の中にツリーハウスを作って、日本の森が育んだ究極の一杯を飲んでもらう。で、横には国産のカカオで作ったチョコレートを置きたいですね。僕が還暦を迎える頃には実現させたいなぁ」、

と宮出さんの夢は広がるばかり。ぜひとも実現させてください!

 

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■DECO & 宮出珈琲

http://www.japan-coffee.com/index.html

スペシャルティコーヒー豆の販売も行われている。

注文を受けてから焙煎する新鮮なスペシャルティコーヒーが500gで1250円~と破格。地方発送も可能。

 

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