2012年07月18日
祇園祭は毎年見る。日が合えば巡行を見ることもあるが、たいてい混雑のピークを避けて、鉾建や屏風祭をちらり覗くことで満足している。今年は三連休の初日が宵宵宵山(?)。コンチキチンの響く京都に降り立った。
◆アーケード写真展で祭の知識を予習
暑い京都の町を散策する前に、まずは腹ごしらえ。ちょうど同行の友人の誕生日が近いこともあり、ちょっとリッチに板前割烹の昼膳をいただくことにした。祇園祭と言えば鱧が切り離せない。別名:鱧祭というほどだ。「今なら鱧の一品も」を狙って、櫻川祇園店を訪れた。ミシュラン京都にも掲載の人気のお店だ。
ちなみに、ただいま祇園の何必館でMAYA MAXX展開催中。MAYA MAXXの作品は面白いし、何必館は静かでくつろげるアート空間なので、祇園祭の京都に訪れたら、喧騒を避けてここで一息入れるのもおすすめだ。
私たちは、ちょうど来館していたMAYA MAXXとお話しすることができてラッキーだった。
何必館・京都現代美術館 MAYA MAXX展は8月19日まで
http://www.kahitsukan.or.jp/frame.html
MAYA MAXX
http://ja.wikipedia.org/wiki/MAYA_MAXX
◆板前さんの鱧切の音もごちそう
櫻川で、最初に出されたホワイトコーンのすり流し。冷たい和製ポタージュのやさしい甘みが、暑さに疲れた体を癒してくれる。ますますおなかがすく仕掛け。次に出された八寸。カモロースやイチジクのゴマダレなどの美味と一緒に、出ました!鱧ずしと鱧の子が…。
「これぞ、祇園祭」と舌鼓を打っていると、シャッシャッシャッと小気味よい音が聞こえてくる。板長の山本さんの鱧の骨切。目の前で骨切が見られるのも板前割烹の醍醐味だ。
失礼して写真を一枚! 料理を片っ端からパチパチ撮るのは無粋だと思う。櫻川木屋町店では、撮影禁止になったとも聞く。今日の祇園店、4組で満席の5階のカウンター席では、他のお客さんも骨切の静かなリズムを楽しんでおられる。というわけで、遠慮しつつ、鱧のカットだけ撮らせていただいた(すみません~~~)。
櫻川にはこの季節、楽しみにしている鱧の定番料理がある。椀物代わりに出される、鱧のしゃぶしゃぶ。カツオと昆布の出汁に玉ねぎを煮出して甘みをつけたスープを器ごと火にかけ、煮立ったものが客の前に出される。そこに鱧をしゃぶしゃぶ~と。
熱いスープにつけると、すぐにほわっと花のようになる鱧をはふはふいただく。そのあと、鱧の味が加わったスープを啜るのが楽しみだ。
もちろん、鱧以外のお料理も素晴らしい。おつくりはシマアジ、蛸の落とし。蛸は塩を沈めたゴマ油でいただく。ユニーク、合いますね!
「生レバが食べられなくなりましたからね」(山本さん) そうか、生レバの食べ方がヒントなんだ! こういうアイデア、楽しいですね。
串に刺されてもまだぴくぴくしている若鮎が目の前の炭火で焼きあげられたのも、香ばしくて美味だった。手際よく料理を仕上げていく板長。食の細い?私たちより品数の多いコースでは、鱧の炭火焼きも!タレを塗り重ねると色艶の増す炙り鱧。人のお料理までたっぷり目と鼻で楽しませていただきました(笑)。これも板前割烹ならでは!
炊き立てのご飯もいただきすっかり満腹だが、デザートはやはり楽しみだ。盆に出された手作りのヨーグルトと粽。粽には祇園祭所縁の護符が。
そう、アーケードの写真展で見た、疫病を免れるという護符だ。
「あっ、でもそれ、僕たちが書いたから後利益ないですけどね(笑)」(山本さん) いえいえ、丁寧に書かれた文字に心がこもっているのがうれしく、ありがたく・・・。粽の中は黒糖味のトゥルットゥルッの蕨餅だった。
櫻川
http://www.kyoto-sakuragawa.jp/
◆蘇民将来子孫也とは…
http://www.hachimansan.com/index.php?Itemid=77&id=142&option=com_content&task=view
◆ショーウインドの中の祇園祭
鱧も食べたことだし、朝もちらり寄った鉾町に戻り、祇園祭を今度は目で味わうことに。途中のお店のショーウインドも祭の展示がされて、これを見て歩くのも楽しみだ。
四条通の長刀鉾を皮切りに函谷鉾、月鉾を見て室町通りに入り、
菊水鉾、山伏鉾、鯉山、黒主山、役行者山を仰いで御池へと抜けた。
鉾の詰め所で押していただくご朱印帳などもあり、全鉾制覇を目指す人もいるようだが、私は毎年、気分次第でいくつか見る、というパターン。近隣のお店も一斉に売り出しなどを開催しているので、
覗いて京都ならではの和の小物などを買う、などの楽しみもある。
そして、鉾に灯が点り、人出がさらに多くなる夕方になる前にさっさと引き上げる。
京人形「田中彌」
http://www.kyoto-wel.com/shop/S81010/index.html
創作京履物「伊と忠」
http://www.kyoto-itochu.jp/store.html
誉田屋源兵衛:室町の老舗の帯問屋
木村英樹:青蓮院の新しい襖絵でも有名な日本画家
http://bit.ly/OTJQ2E
◆錦市場も、鱧、鱧、鱧
おっと、帰る前に、鱧祭レポートの締めくくりとして錦市場をチラリ。やはり、鮮魚店の店頭は、いずれも鱧、鱧、鱧。季節には鱧が目立つが、ここまで鱧が主役になるのは、祭ならではだろう。
小ぶりの照り焼きを串刺しにして、食べ歩きできるものも売っているので、手軽に味わうこともできる。
かつて活魚の入りにくかった都で、獰猛で生命力が強く、日持ちのする鱧は重宝された。もっともおいしくなる旬の季節が祇園祭と重なり、祭に欠かせないごちそうになったのだという。
鱧は淡路から八軒屋を経て上り船で伏見まで、「十石舟」や「担ぎ屋」により運ばれていたときく。八軒屋とは、わが職場の近く、大阪は天満橋の船着き場。なんだか遠い縁を感じながら、目でもしっかり味わった鱧に満足して帰路についたのだった。