2013年09月05日
この10年で、2倍以上に拡大しているミネラルウォーター市場。商品の種類も随分と豊富になってきましたが、はたして「味」にどれくらい違いがあるのでしょうか。
舌に自信のある!?20代から50代の男女4名が、6種類のミネラルウォーターを飲み比べてみました。
不純物の少ない「軟らかい水」、ミネラル豊富な「硬い水」
さて、一口に「ミネラルウォーター」といっても、その定義をご存じでしょうか?
ミネラルウォーターは、「軟水」と「硬水」に大別されます。
1Lあたりの水に含まれているカルシウムとマグネシウムの量(硬度)が少なければ軟水、多ければ硬水と呼ばれます。
*軟水と硬水を分ける基準は国や業界によって異なります。表記は水道局などで使用される一般的な基準値です。
日本は軟水、欧米は硬水が多いのですが、その理由は「地形」にあります。
国土が狭く急流が多い日本は、水が地層に浸透する時間が短いため、ミネラルが滲みにくいのです。反対に、国土が広くて水が地層に触れる時間が長い欧米は、ミネラル豊富な硬水が多くなっています。
軟水と硬水の違いを表にまとめると、こんな感じです。
今回飲み比べるミネラルウォーターは、コンビニなどでも手軽に入手できる有名ドコロの海外メーカー3種類と国内メーカー3種類、計6種類を用意。
「海外メーカー 硬度違い飲み比べ」、「海外メーカーと国内メーカーの軟水飲み比べ」、そして「国内メーカーの硬度違い飲み比べ」の3ラウンド勝負です。
さて、硬度の違いや採水地の違いは、味にどのような影響が出るのでしょうか。
ラウンド1:海外メーカー 硬度違い飲み比べ
超硬水「コントレックス」(1551 mg/l)、中硬水「エビアン」(304 mg/l)、そして海外では珍しい軟水の「ボルヴィック」(60 mg/l)の3種類です。
飲みなれないためか、硬度の高い水は飲みにくさを感じました。
とくにコントレックスは、硬度1500を超える超硬水。
「クセが強くて飲みづらいね、水というよりは薬膳みたい」
「舌触りも良くないなぁ。粘度を感じるね」。
「栄養があるっていうけど、だったら煮干し食べれば十分じゃない」という身もフタもない発言まで飛び出す始末。
ちなみに、栄養成分を調べてみたところコントレックス100mL分を煮干し一匹で、ほぼまかなえてしまうことが判明しました。
500mLのペットボトルなら5匹分。多いのか少ないのか…。
成分表はコチラ
実は、ダイエット飲料として有名なコントレックスには、それ自体に痩せる効果はありません。食事制限や運動などをするダイエットはミネラルを不足しがちで、それらをノンカロリーで摂取できるというのが特徴。つまりダイエット効果ではなく、ダイエットに相性の良い水なのですね。
コントレックスを恐る恐る口に。ダイエットのためなら、ノープロブレム!
続いて中硬水「エビアン」。世界でトップシェアを争う水です。
エビアンは、およそ220年前、フランスの貴族が常飲して腎臓結石を克復したことをきっかけに広まったそう。歴史ある、おフランスの香り…と思いつつ飲むものの
「少しクセがあるものの、まあ飲める。慣れると平気。」
「確かに、さっきの(コントレックス)に比べるとだいぶマシ。」
と肯定意見もありながら、若干中途半端な評価に。庶民的な我々はおフランス貴族に近づけなかった模様。
結局、もっとも評価が高かったのは、
軟水の「ボルヴィック」でした。
「おー。ぐびぐび飲める。飲みやすいね」
「こっちを飲んでみるとわかるけど、
硬度の高い水は喉に引っかかる感じがするね」
と飲み心地の軽さが好評。硬水にはない清涼感を感じました。
ちなみにボルヴィックは「1L for 10L」プログラムという社会貢献キャンペーンでも有名です。
汚れた水を飲まざるを得ない状況にある子どもたちへ1リットル飲むと10リットル分の水を与えるというものです。
このプログラムを知る前と知る後では、購買意欲が
44.9%から60.9%まで上がるとか(野村総研の調査による)。
差別化が難しい商品の売り方として、勉強になりますね。
ラウンド2 海外メーカーと国内メーカーの軟水飲み比べ
続いては、海外組と国内組の対戦です。(なんだかサッカーのJ代表みたい…)対戦するのは、海外代表「ボルヴィック」vs 日本代表「サントリー奥大山の天然水」(以下、【奥大山】と略)。
結論から言えば、海外同士の対戦で好評だったボルヴィックが、奥大山に主役の座を譲り渡すことに。審判陣曰く・・・
「海外勢同士での比較では、飲みやすいと思いましたが、国産と比べると、明らかにクセがありますね」
「奥大山は、つくづく『日本の水』という
キレと喉越しがありますね」
と、全員一致で奥大山を推す声が集まりました。
『ヨーロッパの中では数少ないまろやかでおいしい軟水』を謳い文句に掲げたボルヴィックも、奥大山の前には形無しという格好になってしまったわけです。
もともとボルヴィックの生まれ故郷は、日本に似た火山岩地質。
ミネラルが溶けにくい安山岩のフィルターでろ過されるので、ヨーロッパでは珍しい硬度の低い水が生み出されるわけです。
しかし同じ軟水とはいえ、より硬度が低く、日本の地で生まれた水が日本人には合っていたようです。
豆知識 殺菌処理がルールの日本、殺菌処理がルール違反のEU
閑話休題。
ミネラルウォーターの安全基準は国や地域によって様々です。
日本ではミネラルウォーターは必ず殺菌する必要がありますが、ヨーロッパではむしろ殺菌してはいけないのです。
ヨーロッパのミネラルウォーターは汚染の元となる要素から完全に隔離・保護された状態で採水されます。安全かつ健康に良いことが科学的・医学的に証明する必要があり、認可が通っても無処理で完全に天然の状態のまま出荷することが義務付けられています。
逆に日本の場合は沈殿・ろ過や過熱殺菌を行う必要があり、採水地やミネラル分に関する基準もヨーロッパほど厳しくありません
これは、日本は飲める水が豊富なためミネラルウォーターを、単なる「ペットボトルジュース」の延長として考えていたためだと言われています。ヨーロッパではそのまま飲める水は貴重なため、より厳格に保護や規制をおこなっているのでしょう。
殺菌処理が、味の違いに影響するかどうかは定かではありませんが水の扱い方にその国の風土や文化が見えるような気がします。
第3ラウンド 国内メーカーの硬度違い飲み比べ
というわけで、最終ラウンド。国産ミネラルウォーター同士も比べてみました。
はたして奥大山を上回る強者が現れるのでしょうか?
まずは、「奥大山」vs「霧島の天然水」(ファミマPB:以下霧島と略)霧島の硬度は160g/mL。一般的には中硬水という分類になります。
「やはり奥大山のほうが、爽やかですね」
「(霧島は)清涼感がないなあ。よく言えばまったりしている」
と、こちらも清涼感で奥大山に軍配が上がりました。
次の「奥大山」vs「いろはす」でも、「奥大山」に圧倒的な評価の声が・・・
「そういえば、集めたブランドの中で、採水地の地名がついていないのはいろはすだけですよね」
「いろはすは、エコが売りだから『地産地消』とは言わないまでも、複数の採水地で一番近いところの水を使っているから、採水地を限定していないんですよ。デリバリーによる環境負荷もアピールしているみたい」
確かにいろはすは、1人独自の土俵で勝負している気がします。
それもそのはず、他の商品は「おいしい」「ミネラル豊富」など、謳い文句は違えどマーケティングは水ありきです。
しかし、このいろはすは「ミネラルウォーター購買者は環境問題に対する関心が強い」という調査結果から始まった、マーケティングありきの水なのです。
そのため、樹脂使用率を抑えた潰しやすいエコ容器を使用。
販売店へも7つも所有している採水地から最短距離で送るなどして、石油消費を最低限に抑えているそうです。
商品そのものの品質よりもエコ重視。
『水』商売のなかでは、異彩を放っているとも言えるでしょう。
しかし、このエコ重視も馬鹿に出来たものではありません。
実は、日本のミネラルウォーター市場では輸入製品の割合が多いため、他の国よりも多くの石油を消費していると言われています。
ある調査結果では、2007年、日本のミネラルウォーターの輸送にかかったエネルギーは米国の約1.4倍。一人あたりに換算すると3倍以上のエネルギーを消費していることに。さらに一人あたりのミネラルウォーターの消費量では米国は日本の5.5倍以上であることを考えると、想像以上の消費量です。
参考:NPO法人 市民科学研究所 『市民科学』23号
エコへの取り組みを前面に出したマーケティング手法は、ターゲットによっては大きな効果を発揮しそうですね。
総合優勝は奥大山。
すっきりとした飲み心地で圧勝!!
お腹たぽたぽになりながら、ひたすら飲み比べた結果、硬度がもっとも低い水に票が集まった形になりました。
今回の飲み比べでのいちばんの収穫は、同じ「水」といっても味も舌触りも明確に異なることがわかったことです。
一度飲み比べて、気に入りのミネラルウォーターを探して見るのも良いかもしれません。
ゾウさんチーム