遊民悠民(ゆうみんゆうみん)

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ありとあらゆる情報が溢れるいま、役に立つ情報が見つけにくい。
20代から60代までの「遊民悠民」メンバーが、「遊ぶ」「暮らす」「食べる」をテーマに
さまざまなモノを比較し、レポートしていきます。

たべる

所変われば品変わる。 鯖寿司比べ、老舗めぐり。

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鯖寿司と聞いて、皆さんはどんなイメージを抱かれるだろうか。お正月や晴れの席を彩るご馳走という方もいれば、お父さんが手土産によく買っていた庶民の味という方もいるかもしれない。

たとえば関西でも、京都、大阪、奈良では、鯖のお寿司に対する印象は異なるのではないだろうか。(そういえば、人気者のマグロたちを横目に、ひたすら回転し続けるバッテラの悲哀を歌った大阪の歌が昔ありましたね。)

そこで今回は、先の3つの都市を代表する「鯖のお寿司」の比較を試みようと思う。京都の鯖寿司、大阪のバッテラ、奈良の柿の葉寿司。よくよく考えると値段も食べ方も別物という気がしなくもないが、そんな細かいことは気にしない。前々から気になっていたあの鯖寿司を試すべく、勝手に京都代表、大阪代表、奈良代表の品を選定し、比較検討を開始。さて、いずれに軍配はあがるのだろうか。

 

【京都代表】鯖寿司といえば・・・やっぱり「いづう」さん

京都で鯖寿司を名物と語る店は数多いが、中でも有名なのが祇園の「いづう」だろう。創業は天明元年(1781年)というから、実に230年以上の歴史を誇る。まさに京鯖寿司の代名詞といえる老舗の名店である。

今回は残念ながらお店には行けず、お取り寄せで。

今回は残念ながらお店には行けず、お取り寄せで。

包装紙には富士と松、その上には版画タッチの雪景色の絵のシートが重ねられている。シートは季節ごとに変わるのだろうか(※)、京都らしい風情のある演出だ。ちなみに富士と松の絵のデザインは、天明元年(1781年)の創業間もない頃に考案され、現在に至るまで一貫して、寿司の包み紙として使われているそう。(※記事の公開が遅れましたが、この試食会はまだ冬の時期に実施されています)

期待感いっぱいに、包装紙を開いていく。

期待感いっぱいに、包装紙を開いていく。

包装紙を開くと、一気に立ち上がる酢の香りが食欲をそそる。待ちきれずに竹皮を開くと、しっとりとした昆布に包まれた鯖寿司の姿。その重厚さに一同やや圧倒されながらも、さらにそっと昆布を開くと、ようやくあの鯖の模様が現れた。まるで1匹の鯖がそこに横たわっているようなインパクト。「いや〜これは圧巻ですねえ」「これぞ青魚、これぞ光り物」と、メンバーから声がもれる。確かに好きな人にはたまらないシズルがたっぷりのビジュアルだろう。

昆布を解いて寿司を切るのも特別感があっていい。

昆布を解いて寿司を切るのも特別感があっていい。

ドーンと現れる鯖のあの模様。好き嫌いがあるかも?

ドーンと現れる鯖のあの模様。好き嫌いがあるかも?

包丁を入れると、厚みのある美しい鯖寿司の姿に。

包丁を入れると、厚みのある美しい鯖寿司の姿に。

 

【大阪代表】続いては、バッテラ発祥の老舗「すし常」さん

大阪の鯖寿司といえば「バッテラ」。ということで、こちらも明治24年(1891年)創業の老舗で、バッテラ発祥のお店と言われる「すし常」を選ばせていただいた。バッテラというと鯖の押し寿司をイメージするが、もともとは鯖でなく、大阪で多く獲れたコノシロが使われていたそう。そのコノシロを使って最初に押し寿司を作られたのが、こちらのすし常。その後、コノシロの値が上がり、鯖が用いられるようになったことで、今日のバッテラの姿に至る。

気負いのない包装。気軽に買える雰囲気がいい。

気負いのない包装。気軽に買える雰囲気がいい。

商品の包装はごく普通。この気取りのなさが大阪風だろうか。歴史あるものでありながらも、親しみやすさと愛される値段で、美味しい寿司を作りたいというお店の心意気を感じさせる。

お父さんの手土産風でワクワク。美味しそう。

お父さんの手土産風でワクワク。美味しそう。

包装を解き、竹皮の包みを開くと、いかにも作り立てという風のバッテラが登場した。その懐かしさを感じさせる姿に、一同、なんだかほっこり。いづうの鯖寿司のような、いかにも「鯖!」といった強さはないが、「この白板昆布の透けた感じがいい」と大阪人のメンバーからは好印象。「見た目にも鯖っぽさが薄いので、鯖や光り物があまり好きでない人にも手を伸ばしてもらいやすいかも」という意見も出た。

きちんと切られているので、すぐに食べられる。

きちんと切られているので、すぐに食べられる。

作り立てのふわっとした形と酢の香りがやさしい。

作り立てのふわっとした形と酢の香りがやさしい。

 

【奈良代表】最後は、名物・柿の葉寿司の老舗「平宗」さん

3つ目は、奈良の名物である柿の葉寿司。これも名物というだけに多くのお店が存在するが、今回は老舗をテーマに比較しているので、「総本家・平宗」を選ばせていただいた。こちらも歴史は古く、創業は文久元年(1861年)。実に150年以上の歴史を誇る。とはいえ、関西以外では馴染みが薄いかもしれないので、念のために記しておくと、柿の葉寿司とは、ひと口大の酢飯に鯖や鮭などの切り身を合わせて、柿の葉で包んで押しをかけた寿司のこと。かつては奈良県・吉野地方の家庭料理であり、夏祭りのご馳走だったそうだ。

外から見ると、お弁当のようにも見える。

外から見ると、お弁当のようにも見える。

包装も特別感はなく、こじんまりとした駅弁のよう。包装を解くと木桶のふたのようなものに輪ゴムがかけられている。開けるまで押しをかけているということだろうか。ふたを開けると、リーフレットとお手拭きが付いているところが、またお弁当っぽくて親切だ。

木桶のような箱。ふたは輪ゴムで留められている。

木桶のような箱。ふたは輪ゴムで留められている。

ふたを開くと、お手拭きがあるのがうれしい。

ふたを開くと、お手拭きがあるのがうれしい。

薄紙を開くと、緑の柿の葉に包まれたお寿司が、小ぶりの箱にぎっしり。その見た目と、ほんのりとした酢と柿の葉の香りが食欲をそそる。「ひとつひとつ葉の個装を開くのも楽しいし、どこでも手で食べやすいのがいい」「このサイズ感につられて、ついつい手が伸びてしまう」と楽しげな意見が出る。このように場を盛り上げる見た目も、夏祭りのご馳走だった所以なのかもしれない。

小さな木箱にぎっしり。つい手が伸びる見た目。

小さな木箱にぎっしり。つい手が伸びる見た目。

葉を開くと、ちょこんと寿司が現れてかわいい。

葉を開くと、ちょこんと寿司が現れてかわいい。

 

さて、その味わいは?お待ちかねの試食&比較タイム

見た目はこれくらいにして、肝心の味わいはどうか。実際に試食したメンバー4人の意見とともに、その評価をご紹介していこう。

 

■いづう 鯖姿寿司

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「鯖の身がしっかり主張。しっかり締めた味わいだが、生の身の新鮮さも感じられる。脂の旨みまで、もっとも鯖の身を味わえる感じ」。

「分厚い鯖の身は圧倒的な存在感。その見た目の通りどっしりした食べごたえ。『味の芸術品』というフレーズにも納得」と、さすがの好評価。

しかし一方で、

「身のゴリゴリした歯触りが私はやや苦手。尾の方を使った?皮の無い部分の寿司が、蒸した鯖の身みたいだけど、お味はちゃんとしていて食べやすかったです」という意見もあった。

切り方や食べ方にもよるのだろうが、厚みのある身と凝縮された鯖の味、ぎっしり詰まった寿司飯で、一、二切れでおなかにどっしり来る。やはり日常的に食べるというよりは、お正月や晴れの席に彩りを添える一品、一切れのご馳走という印象だ。

 

■すし常 バッテラ

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「見た目通り、寿司飯もいまにもばらけそうな、ふわっと感。甘酢も強くなくごはん感が強い。寿司としては頼りないかも?」

「鯖のそぎ身の量が少なめなので、主張はないが、後口に鯖の旨みはちゃんと残る。昆布がまとめの役を果たしている感じ。すごく鯖好き、というわけでもない私には程が良くて、好きです」

「驚きはないが、名脇役のオーラが漂う、安定感のある仕上がり」といった意見が出た。

味は「はんなり」としていて、パッケージ、価格、見た目も含め、親しみやすい庶民派の寿司という印象。しかし奇をてらわない分、誰にでも食べやすく、バランスの良い美味しさだ。

 

■総本家・平宗 柿の葉寿司

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「鯖と寿司飯の一体感がほどよく、食べやすい。反面、鯖の身の押しが強い気がする。甘酢の味も強く、小さい一切れでも寿司を食べた満足感がある。」

「先の鯖寿司やバッテラと食べ比べると、若干、後味に鯖臭さが残る。食べ比べていなければ気にならないか、好きな人にはこれがまた良いのかも。」と、若干クセのある味に賛否が出た。

しかし、なんとなく味が濃いところと、食べやすいサイズにつられて、ついつい食べてしまう。小腹が空いたときのおやつ代わりや、お出かけのお供にもできる便利さ、ファーストフード感覚が良いのだろう。

 

同じ鯖を使ったお寿司とはいえ、こうして食べ比べると、それぞれに合う食べ方、楽しみ方がある別物であることが改めて分かる。が、ここは少々乱暴に、「見た目」「価格」「味わい」の3つの軸で評価を付けてみよう。4人のメンバーの採点を合計した結果は以下の通り。

 

【総合評価】

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ということで、僅差で「いづうの鯖姿寿司」がもっとも高い評価を得た。

桜も満開になり、絶好の行楽シーズン。お出かけのお供に、美味しい鯖寿司はいかがだろうか。

ごちそうさまでした。

ごちそうさまでした。

 

タイチョウ(Team Lion)
鯖寿司 比べてみました
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