遊民悠民(ゆうみんゆうみん)

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ありとあらゆる情報が溢れるいま、役に立つ情報が見つけにくい。
20代から60代までの「遊民悠民」メンバーが、「遊ぶ」「暮らす」「食べる」をテーマに
さまざまなモノを比較し、レポートしていきます。

くらす

「消化願望」

歳をとると、「減ること」「喪うこと」が多くなる。しかし、「増えるもの」「追加されるもの」も確かにある。
もちろん「変らないものもあるだろう」。「減ること」「喪うこと」は枚挙にいとまがないが、「増えるもの」「追加されるもの」に注目するとマーケッティング的に面白いものが見えてくる。

私の所属する「シニアマーケティング研究室」では、その視点でのマトリックスを作り、考察を始めている。
その「増えるもの」に一つに「好奇心」がある。ひょっとすると「好奇心」の強さは変わらないが、他の情動が減ってゆくなかで、「好奇心」が変わらないため相対的に「増えるもの」に見えるのかもしれない。この辺りは一歩踏み込んだ考察が必要だろう。
「好奇心」と切り離せないのが「消化欲望」(私が作った造語であるが)である。

博報堂DYメディアパートナーズ 「70代のメディア接触と消費行動に関する調査」【調査時期】2011年11月で4つのキーワードを導き出している。
http://adv.asahi.com/modules/feature/index.php/content0561.html

① 人生の残り時間を意識して「いま楽しまなくて、いつ楽しむの?」という「カケコミ消費」
② 食事や旅行は「量より質が大事」という「ホンモノ消費」
③ 「自分のために、好きなものを買う」という「イケイケ消費」
④ 限られたお金を、使うべきところに使う「メリハリ消費」

上記の「カケコミ消費」がそれに近いが、「消化願望」は、これまでの人生で実現できなかったことを生きているうちに消し込んでおきたい、という願望である。
「好奇心」+「消化願望」がセットになって行動する顕著な例の一つが、「旅」である。「”Vedi Napoli e poi Mori” ナポリを見て死ね」という諺がそのことを象徴している。

ナポリの風景

ナポリの風景(ウィキペディアより)

私の廻りにも70才を超えて「マチュピチュ」「九寨溝」や「小笠原諸島」、「屋久島」に行った人達がいる。さらに、ヒマラヤに登る人、南極大陸に行く人もいまでは珍しくはないだろう。と言うより、そのような所に行くのは若い人達ではなく、高齢者が多くの割合を占める。時間、可処分所得に恵まれているにしても「快適」というより、「過酷」という所を旅するには、単なる「旅行好き」を超えた力が働いていないと説明がつかない。

残された時間が少なくなる中で、突き動かされるように「旅」にでる人たち。「自分さがし」はもう必要ではないだろう。
この「消化欲望」を満たすのは「モノ」ではなく「コト」である。「モノ」が必要であってもあくまで「コト」のための「モノ」である。「コト」から「モノ」への落とし込み。その辺に高齢者を対象にしたマーケティング紐の結び目が見え隠れしているのではないか。

【参考】ニールセン株式会社の調査
◆シニアの心をつかむ旅行予約サイト 「クラブツーリズム」(2012/09/04 メルマガNielsen Reporterより)
http://www.netratings.co.jp/email_magazine/2012/09/post-11.html

村井一角
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