遊民悠民(ゆうみんゆうみん)

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ありとあらゆる情報が溢れるいま、役に立つ情報が見つけにくい。
20代から60代までの「遊民悠民」メンバーが、「遊ぶ」「暮らす」「食べる」をテーマに
さまざまなモノを比較し、レポートしていきます。

あそぶ

サラリーマン、俳句のハウツー本を出す

結社の主宰など、著名俳人というわけではない。
俳句好きの普通のサラリーマンひらのこぼさんが、俳句のHOWTO書を書いた。『俳句が上手くなる100の発想法』。この本が当たり、発想法シリーズを次々出版。

11月末に、5冊目の『名句集100冊から学ぶ俳句発想法』が出た。
これは異例のことだ。なぜ、業界人でもないサラリーマンが5冊も俳句の本を出版することができたのだろう?

執筆した本を、本屋で見る楽しみ(天満橋ジュンク堂にて)。

◆始まりは、句会を実況中継したような1冊の本だった。

まずは、俳句を始めたきかっけは?
「15年ほど前、『俳句という遊び』(小林恭二著)を読んだのがきっかけ。俳句と言うより、句会って面白いんだなあと思った。
一度句会というものをやってみたい!それで、当時の会社の仲間や、飲み屋で会う退職した仲間に声を掛けた。
7~8人くらい集まって一回限りのつもりで句会をしたら、これがめっぽう面白かった」
で、はまってしまった?
「句会って静かなものだと思ってたけど、何もわからない者同士で始めたこともあって、言いたい放題。エキサイティングバトルでみんな興奮して、『毎月やりたい!』となり…。
その句会仲間の一人が、『俳句という遊び』をまねて、句会レポートを書いてくれたのも大きかった。そうそう、こんなに楽しかったという思いが増幅されて…」ずっと続けることに?「集まってのリアルの句会は、月1で5、6年くらい続けたかな。

吟行みたいなこともやりだして。そのうち、仲間が各自の都合でバラバラになり(海外に移住した人も含め)、メール句会になったけど、今も細々続いてますよ」

5冊揃った、俳句発想法シリーズ

 

◆仲間のために書いたアイデアメモをネットに上げたら…

本を書くことになったキカッケは?
「好き勝手な句会を始めて1年くらい経って『ちゃんと俳句を勉強するために各自結社に入ろう』ということで、ポツポツ
結社に入る仲間も出てきた。私も、丁度その頃、新結社を
立ち上げた中原道夫主宰の『銀化』に入会。
ただ、結社に入らない仲間もいたし、句会を始めた
責任上、参考になる本を紹介しようとか見ている時に、いわゆるHOWTO書的なものはないなあと。入門書はあっても実践的な俳句作法という感じの本が見当たらない。困った。仕方なく、自分で簡単なアイデアメモを書いて、ネットに上げて共有したわけです」
仕事が編集、コピーライターということで、そういうのはお手の物だったわけですよね。
「仕事でHOWTOものは経験がいろいろあった、ということもあって、まあ、気軽にやった。あくまでメモレベルでしたし」
それが本になったのは?
「リタイア直前、そのメモをサイトで見つけた編集者から声が
かかった。これで本を書いてみませんかって」
一冊目の反響は、けっこうすごかったみたいですね。
「すごいってことはないですけど、俳句関係の本としてはまあまあ売れたようです。紀伊国屋などで平積みされたのを見た時は、さすがに感動しました。現在四版までいっています。掲載句の著名俳人の方の中にはおほめのハガキをくださる方もいて、ありがたかったです」
そして俳句発想法シリーズを次々5冊も。やっぱり、すごいですね。

◆俳句とアートのコラボレーションも体験

アートと俳句のコラボレーションのようなこともされたとか。
「よく行っていたギャラリー、夜は飲み食いできるユニークな
ギャラリーですが、そこの常連でもある銅版画作家の芝高氏が私の俳句をテーマに作品を作ってくれました。
もう4回くらい、俳句をテーマにした作品を展覧会に出されたかなあ。これも俳句を始めていなかったら、なかったことですよね。俳句を始めたことで、いろいろ世界が広がりました。本当に、やってよかったなあと思っています」

銅版画作家:芝高康造氏とのコラボ作品『蟇』

 

句:ひかり一枚大根のかつらむき(ひらのこぼ)

 

句:アブサンはよもぎの匂ひ朧月(ひらのこぼ)

 

句:暗くなる一方にゐる蟇(ひらのこぼ)

◆飲み食いが主目的?ギャラリー句会も開催

俳句はネットワークも拡げてくれたのだと思いますが、現在の句会ペースは?
「東京に単身赴任していたときは『銀化』の句会に顔を出していましたが、関西に戻ってきてからは、こちらは欠席投句という形です。リアルの句会としては、前述のギャラリーの仲間での句会が月1ペースであります。ギャラリーに出展する作家さんやオーナーであるマダム(この人も染色作家ですが)の知人の大学教授など。弁の立つ人が多い、賑やかな句会。
俳句より料理上手のマダムのユニークな肴目当の人が多いような。最近は、若い作家さんも参加して、なかなかフレッシュです。
あと、マダムの紹介で、さる主婦グループの俳句指導も隔月で行っていて、それもまあ句会と言えるかな」
1冊の本を読んだことから、いろいろ楽しいことにつながっているんですね。そんな俳句に囲まれた日々から、また次の本が生まれるのを楽しみにしています。お話をありがとうございました。

ひらのこぼ
昭和23年京都生まれ。大阪大学工学部卒業。
汽船会社設計部を経て、広告制作会社にコピーライター
として就職。奈良市在住。
俳句結社『銀化』(中原道夫主宰)同人、俳人協会会員。
『俳句がうまくなる100の発想法』はじめ、俳句発想法
シリーズを次々出版。

芝高康造
昭和23年大阪生まれ。武蔵野美術短期大学卒業。
第3回大阪現代アートフェア(大阪府立現代美術センター、大阪)
ほか、各国での国際版画ビエンナーレ、版画展に出品。
国内各地でも定期的に個展を開催。

安里道行

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