2013年02月25日
今まで経験したことのない乗り物
晴れて私のもとにやってきたハーレーダビッドソンですが、客観的に見て同格の国産車に比べるとメカニズムもクラシックで数値上の性能は優れているとは言えません。それになんといってもかなり高額です。ところが猛烈に縮小しているマーケットに4つもの国内メーカーがひしめく日本二輪市場で、なんと販売台数をのばし続けているといいます。そんなミラクルが私の購入した廉価なモデルにも潜んでいるのでしょうか。
私のフォーティエイト、実車をまじまじと眺めてみます。タンクの塗装からエンジンや細部の仕上げまで非常に丁寧で美しく見えます。私が抱いていたちょっと大味なアメリカ製品のイメージとは違い、どちらかというとアップル製品に近い感じがしました。
そして跨がってみます。おぉシートが低い。身長168センチの私でもかかとがベタッと地面に付き、膝に僅かな余裕さえあります。これはハーレー全般にほぼ共通した特長ですが大型車に乗る上でまず大きな安心感となります。
キーを捻りスタートのボタンを押すとズドドン!とエンジンがかかります。1200ccのV型2気筒エンジンの目覚めはけっこう爆発的で、乗り手もまずここで気持ちのスイッチが入る感じがします。このエンジンスタート、私は国産の感覚で普通に思っていましたが、インジェクション(電子燃料噴射仕様)以前のキャブレター仕様モデルは季節によって始動に少々コツが必要だったようです。
ちょっと重いクラッチレバー(このレバー・スイッチ類がかなりアメリカ人サイズですが)を握り、シフトペダルを踏み込むとガタン!といかにも歯車が噛み合うような音がしてギアが1速に入り、クラッチを少し緩めるとあまりアクセルに神経質にならなくても車体はスゥーッと走り出します。OHVと言われる古いエンジン形式のせいか燃料の爆発音に加えてカチャカチャと色々な金属部品が動いているような音が聞こえます。騒音規制値をクリアした日本仕様のマフラーなので本国よりかなり静かな排気音だそうですが、独特のエンジンサウンドはジェントルに健在で私はむしろそれが好ましく思えます。
フォーティエイトの場合ライディングポジションがハーレーの中でも特に独特で、国産ネイキッドモデルのように位置が前方にあるハンドルに加え、シフトとブレーキのペダルも目いっぱい前にあるフォワードコントロールと呼ばれるポジションのため、手も足も思い切り前に投げ出すような感じになります。やはりここもアメリカ人の体格が想定されている感じで、私の場合試乗した時あまりにペダル類が遠かったので5センチほど手前に移動するキットを組み込んでもらいました。
シートの低さ、独特のエンジン音、それにちょっと慣れが必要なライディングポジション。走り出して数メートルで、今まで自分が乗ってきたどのオートバイとも違う何か特別な乗り物を操縦しているような感覚がやってきます。そしてアクセルを開けていくとシートに接するお尻のあたりをグワッとマッチョな巨人が押してくれるような感じに加速していきます。この加速感は伝統のエンジン形式のトルク特性なればこそとハーレーに詳しい人のブログなどによく書かれています。
またハーレーは振動が凄いというイメージがありますが、私の車両はエンジンがフレームへ取り付けられる部分にラバー(おそらく硬質ゴム)を介在させるラバーマウントという新しい取り付け方式になっているせいか、適度に振動を感じながらも心地よく走れるなかなか絶妙な乗り味に思えます。
最新技術で維持されている伝統
私の車両の特長としてご紹介してきたインジェクション、低騒音マフラー、そしてこのラバーマウントなどの仕様は現代のハーレーを象徴する特長でもあるのですが、昔からの一部のファンの方たちには「こんなのハーレーかぁ?」と言わんばかりにウケが良くないようです。確かにそれらはハーレーダビッドソンならではの強い個性を多少スポイルしているかもしれませんが、創業100年を越える大看板の老舗メーカーが次の100年も無事に乗り切るためには、こういった守るべきものと変えていくべきものとのバランス感覚が大切になのではないでしょうか。
ゆるゆると始まっていく
私のバイクな日常。
その3に続く。