2012年12月04日
12月の声を聞けば、京都は南座の顔見世。例によって友人の手配で、初日翌日の12月1日(土)の昼の部を見ることに。ここ数年、恒例のお楽しみだ。
南座(松竹株式会社HP):http://www.shochiku.co.jp/play/minamiza/
◆『出雲の阿国』にご挨拶して、いざ観劇!
歌舞伎の発祥は、京都四條河原で出雲の阿国が行ったかぶき踊りだ。その地にある南座は、江戸時代から続く日本最古の劇場(江戸時代、四条河原には7つの芝居小屋が存在したが、火事で幾度も焼失し現在は南座のみが現存している)。歌舞伎発祥の地で、江戸期から続く『顔見世』を見られるのだから、歌舞伎ファンには応えられない。
南座西側には『阿国歌舞伎発祥の碑』があるのをご存じだろうか?阿国のかぶき踊りに思いを馳せて(元祖歌舞伎はどんなだったろう?)気分を高めて、いざ、観劇!
顔見世:http://bit.ly/QZEvhH
出雲の阿国:http://bit.ly/bFmVgN
◆今年の話題は、やっぱり勘九郎の襲名
昼の部、前半は『佐々木高綱』(ささきたかつな)、『梶原平三誉石切』(かじわらへいぞうほまれのいしきり)と続く。いずれも源平絡みの物語で、「今年はNHKの大河ドラマが『清盛』だったから?」と思ったりした。
『佐々木高綱』では、先月の『永楽館歌舞伎』でファンになった、ラブリンこと愛之助さんが、馬飼の役で出演。『梶原~』では、七之助の娘役が可憐なこと。
そして後半。六代目襲名で話題の勘九郎が『寿曽我対面』(ことぶきそがのたいめん)で、曽我の五郎を演じる。『寿曽我対面』は吉例に欠かせない寿ぎの演目で、去年の顔見世でも上演された。様式美満載の舞台を、去年と違う役者で見るのも、また楽しい。
荒事の曽我の五郎(勘九郎)に、和事の十郎は時蔵さん。五郎と十郎は本当に対比の妙だ。ともに赤の着物に水色の裃の鮮やかな衣装。兄弟の敵役の祐経は仁左衛門さん。黒の着流しに大胆な金の模様で、渋かっこいい! 豪華な衣装の傾城も並ぶ舞台は、きらびやかで夢の世界のよう。その中で、五郎が長い袴の裾を蹴り上げて、カッと見得を切る様にしびれる。
『寿曽我対面』:http://bit.ly/if75b5
六代目中村勘九郎(俳優名鑑):
http://www.kabuki.ne.jp/meikandb/meikan/actor/62
勘九郎の襲名興行は、先に9月の松竹座を幕見した。文楽や歌舞伎に出てくる狐が大好きな私は、どうしても勘九郎の『雨乞狐』が見たかったのだ。
雨乞狐が、『義経千本桜』(よしつねせんぼんざくら)の源九郎狐の子孫という設定だから、なおさら見ずにいられない。野狐、雨乞い巫女、座頭、小野道風、狐の嫁入りを一人で次々と踊り抜く勘九郎に、感動の拍手を送ったのだった。
さて、顔見世の話に戻ろう。昼の部は10時半開演~4時終焉。昼の弁当は、やはり南座内で購入することに。 京料理花萬のお弁当は、薄味で大変おいしかった。
◆伝説の大夫、夕霧の話がお菓子になった!?
昼の部の締めくくりは、『廓文章吉田屋』。大阪新町に実在した名妓、夕霧太夫が若くして亡くなり、その死を惜しんだ人々の思いに応えるように、夕霧を主人公にした浄瑠璃・歌舞伎が数多く作られた。今回上演の『廓文章』(くるわぶんしょう)、通称吉田屋もそのひとつ。夕霧と、愛人藤屋伊左衛門の物語だ。
師走の吉田屋(遊郭)に紙子の着流しに深編笠姿の、尾羽打ち枯らした藤屋伊左衛門が訪ねてくる。夕霧と馴染みを重ね,お大臣遊びを尽くした結果、親に感動され、借金を背負った身。それでも久々、夕霧の顔が見たいと吉田屋主人に声を掛ける。主人は快く伊左衛門を座敷に上げ、夕霧を待つように言う。他の客の座敷にいる夕霧を待つ間、じれてふて寝をする伊左衛門。恋しい夕霧が表れても、嫉妬の恨み言、すねる姿は、和事の典型とも言われ、人間国宝:藤十郎さんが、扇雀さんの夕霧相手に、見事なじれっぷりを見せてくれる。
二人の痴話げんかのうちに、伊左衛門の藤屋から「勘当解かれた!」の知らせと、夕霧を身請けするための千両箱が届けられ、「めでたやな」で締めるお祝儀狂言となっている。
劇場内では、この演目にちなみ、井筒八つ橋本舗の上菓子『夕霧』を販売。
土産のほか、幕間に味わう個売も行っていた。『夕霧』は、伊左衛門の編笠をモチーフに昭和二十二年に井筒八つ橋本舗が生み出したお菓子。その普及版として売り出されたのが、つぶあん入り生八つ橋『夕子』だそうだ。
『廓文章 吉田屋』(歌舞伎への誘い):http://www2.ntj.jac.go.jp/unesco/kabuki/jp/5/5_04_11.html
井筒八つ橋本舗HP:http://www.yatsuhashi.co.jp/
夕霧太夫:http://bit.ly/Vnmoj6
◆アフター顔見世は、ホテルのバーへ
「寿曽我は、やっぱり華やかやったね」などと言いながら、鴨川に添って御池まで歩く。冷たい京都の風も、観劇にほてった身には気持ちいい。ホテルのバーで、アフター顔見世といきましょう。
明るいうちのバーの、まだ澄んだ空気とゆったりしたソファが落ち着ける。「口上は夜の部だよね」「夜の忠臣蔵、仁左衛門さんの早野寛平! 腹切りの段が見たい! 11月の文楽で見たけど…」などなど、顔見世話に盛り上がりつつ、グラスを傾けるうちに、バーも夜の灯りとなっていく。
京都ホテルオークラ(バー:チッペンデール):http://bit.ly/QZGiDj