遊民悠民(ゆうみんゆうみん)

遊民悠民(ゆうみんゆうみん)

ありとあらゆる情報が溢れるいま、役に立つ情報が見つけにくい。
20代から60代までの「遊民悠民」メンバーが、「遊ぶ」「暮らす」「食べる」をテーマに
さまざまなモノを比較し、レポートしていきます。

あそぶ

陶のオブジェとコラージュアートの空間

春分の日、春の気分にふさわしい女性アーティストの二人展を覗いた。
ホームページの写真のお二人、素敵なジャケットの大野瑞代さんとベレーがお似合いの高橋礼子さんの作品展だ。
ギャラリーに展示された作品は、壁のキャンバスが大野さんのコラージュ作品。台に置かれた陶のオブジェが高橋さんの作品。
知らずに覗いた人は、一人の作品だと思うほど、お二人の作品はおしゃれなハーモニーを奏でている。
「大野さんから『私とあなたの作品なら,合うと思う』と、二人展のお誘いをいただいたんですよ」と高橋さん。「で、大野さんの作品のイメージもあって、作った作品もあります」
それぞれ個性的だけれど、展示の妙もあって、調和しつつ、互いの魅力を引き立てている。そんな、楽しくて、居心地のいい空間を創りだしていた。

キャンバスアートと陶のオブジェが調和した素敵な展示。

 

キャンバスアート数枚を大胆に敷いて陶のオブジェを飾った。

 

ハーモニーとコントラスト。おしゃれな空間演出。

◆塔?フェアリー?不思議な存在感の陶オブジェ

建物をモチーフにした高橋さんのオブジェは、小さな戸口や半開きのような窓が、見る者を不思議の国へと誘ってくれる。窓を覗くと、反対の壁から挿しこむ光が見えるオブジェも。
愛らしい家そのもののオブジェもあれば、不思議な生き物のような塔のオブジェもある。

二つ開けられた穴が表情を持って、人のいない夜のギャラリーで踊り出しそう。フェアリーだと思った。

 

壁の階段に誘われ、この家に入りたい気持ちにさせられる。

 

陶ではなく、段ボールと木を重ねたオブジェも。右手前のオブジェは振ると音がする。銀杏が入っていると言う。作家の遊び心だ。

 

こちらは木の家。「こういう色は木でないと付けられないから」(高橋さん)。ギャラリーの入り口をパッと明るくしていた。

◆小さな夢の世界に引き込まれて

以前、別の作家の展覧会で買ったと言う、金属のオブジェを持参して、高橋さんの陶のオブジェに合わせてみる女性もいた。
「この子(金属の人形オブジェ)に家を買ってあげようと思って。この陶器の椅子にもうまく座るんじゃないかと…ほら、ばっちり!」
陶の家、陶の椅子に、金属のオブジェがマッチして、空想を拡げてくれる。そんな魅力のあるオブジェの数々。
そういえば、小さな陶の椅子を、奪いあうように購入していた男性二人がいた。初老の紳士と、若手のアーティスト。
「この椅子は、飾ってもいいし、寝かせると箸置きにもなる」二人して盛り上がっていた。男性のコレクション癖も刺激する、そんな夢のある作品なのだろう。

やさしい持ち主?により、椅子と家を得た金属のオブジェ。

 

「椅子は、この世界に誘うために作ったんです」(高橋さん)

◆染色作家のコラージュアート

真っ白な壁面を飾るコラージュアートの大野さんは、染色の作家さん。美しい色合いのスカーフやネクタイなど、「身につけると人と違って見える」「こういう色合いは探してもなかなかない」というファンも多い。
そうした染色作品の合い間に、さまざまな手法のアートも制作。
今回のコラージュは、ドイツやスペインなど、海外での展示でも好評だったシリーズだ。
染めた布はもちろん、金属や木片、糸など、多種の素材を用いてコラージュを創り上げている。

美しい染布をコラージュした作品も。

 

白い壁にモノトーンのコラージュがリズムを奏でる。

 

モダンなインテリアに合いそうなコラージュ作品。

 

上のキャンバス、ブルーの染布と黒のコントラストがシック。染布のくるみぼたん?がワンポイントに。

 

「砂漠に捨てられた小船みたい。月光に漕ぎだすかも」そう呟いた客も…

 

インテリア空間のお手本のよう。お二人の作品を揃えて飾ってみたい。

 

2種の染布のコラージュ。微妙な染めのテクスチャーが魅力的。

◆アーティストのセンスは料理にも活かされる!?

大野さんは、ご自身が作家であると同時に展覧会開催のギャラリーのオーナーでもある。
「少しでも創作活動をされている方を応援したいから、この仕事を選んだ」という大野さんの周囲には、ベテランの作家さんはもちろん、若手のアーティストの卵も集まってくる。
そんな人たちに人気なのが、大野さんのさっぱりとした性格と同時に、おいしい手作り料理なのだ。2年前のギャラリー改装前まで、夜はカウンターで料理を出すユニークなギャラリーとして知られ、料理好き、酒好き、アート好きが通っていた。大野さん自身、お酒は飲めないのに,肴のセンスは抜群で、私もここで知った食材、組み合わせも多い。
改装後、カウンターがなくなり、バーの機能は、ギャラリーの前に作られた息子さんのKanバーに譲られたが、それでもなにかある時には、大野さんが手作り料理を披露する。

この日も祝日とあって、ゆっくり見に来る馴染み客も多いと予想したのだろう、展覧会のハガキには「春分の日には軽食をご用意してお待ちしています」とあった。夕方に覗いた私は、ボリュームあるランチと、友人とのお茶タイムで、おなかパンパンだったにも関わらず、最初は断ったちらし寿司をおかわりしてしまった。筍と蕗を刻んだ、上品な春の味わいだ。
ドイツから里帰り中の舞踏家の女性は、ドイツ人の御主人を伴っていたが、このご主人も、ちらし寿司をお代り。数種のピザの中でも、ヒジキのピザがお気に召したとあって、「おいしい」を連発していた。
ワインに日本酒と、アルコールも用意され、「1時ごろから
ずっとここにいる」などという豪の者も。それだけ居心地がいいんですね。

そんな酒宴?の輪も、すこしづつメンバーが入れ替わりつつ続き、夜になって『あの阿波踊りの~』と言われる紳士も来展。
いつぞや「ギャラリーで阿波踊りを」と言うイベントの際の指導者?のようで、ギャラリーから阿波踊り隊が繰り出して、周辺を驚かせたと聞いたことがある。もしや、今夜も? そんな期待に後ろ髪引かれながら、用事のある私は、ギャラリーを後にしたのだった。

絶品のちらし寿司ほか、料理が用意されていた。

お二人の素敵な展覧会は、本町のギャラリーエスパス446にて。
なんと今日まで!! 見たい方は、お急ぎください。
http://www.espace446.com

安里道行
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