2013年02月17日
二輪への想い、覚醒す
大手のオートバイ買取業者さんの広告をテレビでもネットでもよく見かけます。
好きで乗っていたはずのオートバイが、就職・結婚と変化してゆく暮らしの中で、いつの間にかずいぶん優先順位を落としてしまい、ついには買取業者さんに電話をする日が来る。そんな人が多いのでしょうか。実はそれまったく私の事でした。
手放して十数年。私のオートバイへの想いは深い冬眠状態で心の奥底に沈めたままでした。それが一昨年の初夏ごろからでしょうか、毎朝バス停に向かう私の横を走り去る1台のオートバイを見かけるようになりました。ひと目でアメリカ製大型オートバイ「ハーレーダビッドソン」であることはわかりましたが、意外だったのはその小ぶりなサイズ感と大人しめのエンジン音でした。それは私の中のハーレーダビッドソンのイメージとは〝良い方向〟に違うものだったのです。
ホームページで調べてみると現在のハーレーダビッドソンには排気量883ccから1801ccまで実にたくさんのモデルがあり、私が毎朝見かけるのは比較的小排気量・コンパクト・廉価な「スポーツスター」と呼ばれるファミリーの中のモデルだとわかりました。ちょっと興味を持った私はスポーツスターファミリーのモデルたちを次々と見ていったのですが、そこで運命の出会いをしてしまいます。「ハーレーダビッドソン XL1200X フォーティエイト」このモデルが目に留まった時、私のオートバイへの想いは、永い眠りから醒めることになりました。あぁこの感覚、実に懐かしく清々しい。
ハーレーダビッドソン ジャパン
http://www.harley-davidson.co.jp/
とにかく教習所へ行こう
ところがフォーティエイトに乗るには当時私が所持していた普通自動二輪免許ではなく大型自動二輪免許が必要でした。買う買わないは別にしてとにかく免許は欲しいと家内に交渉。「免許だけなら」ということで許可をもらい教習所へ行くこととなりました。普通自動車免許と普通自動二輪免許を持つ私が大型自動二輪免許を取るなら、学科免除、実技も二段階構成の最短12時間で教習所を卒業できます。ところが私の場合もともと運動神経が鈍い上に仕事のない土日のみの教習、おまけに仕事の繁忙期でちょっと体調を崩していたこともあり、すんなりとカリキュラムが進むはずもなく、教習所通いは随分長い期間に感じられました。
そんな私にも卒業検定試験の日はやってきました。当日教習所の掲示板を見ると私は受験者トップバッター。なのに不思議なくらい心静かに検定車を走らせる事ができ、なんとそのまま合格してしまいました。教習に苦戦し運転技術に自信のないまま試験に臨んだ私でしたが、安全確認や法規走行でミスをせず、不得意なスラロームや一本橋は転倒や脱輪にだけ気を付けて無難にやり過ごす…という最終見極め教官のアドバイスを心に据えて、ひとつひとつ丁寧にかみしめるように走った事で心は平穏を保ち、なんとか最低合格ラインの70点は残せたのかもしれません。
そしてハーレーダビッドソンのお店へ
晴れて免許を手にした私ですが、やはり手にしただけで済まないのが人の気持ちというもの。家内の顔色を伺いながらもハーレーダビッドソンのカタログを取り寄せたり展示イベントに出かけていったりと、日常の行動が少しずつオートバイに近づいていきます。そしてバイク好きの友人に背中をポンと押され、ついに最寄りのハーレーダビッドソン正規ディーラーを訪ねてしまいました。
大きな自動ドアを入ると、店内はちょっとアメリカの倉庫風。所狭しと並んだハーレーダビッドソンと革ジャンやグッズ、それにダンディなおじさんスタッフたちの穏やかな笑顔が私を迎えてくれました。お目当てのフォーティエイトはなんと展示車も試乗車もあり、試乗・オプション選び・見積り・希望色の在庫確認と、はじめてお店に来たのに話があまりにスイスイと流れ、危うく契約しそうな勢いでしたが、なんとか気持ちにブレーキをかけ見積書だけもらって帰りました。
その夜はいよいよ正式な許可を得るための家族会議となりました。私がオートバイに乗る事自体に反対はしたくないけれどやはり事故や怪我の心配は拭えないという家内の主張に、真っ当な答えが見つからない私でした。ここはとにかく平身低頭、歳も歳だし乗ったら絶対に無茶はしないという固い約束をし、最終的に購入が許可されました。
ハーレーダビッドソンがほんとにやってきた
契約から2週間、納車の日になりました。家内と共にお店に着くと入り口脇にアメリカ・ミズーリ州・カンザスシティ工場から京都までの長旅を終えたクロームイエローのフォーティエイトが待っていました。
ものすごく嬉しいのですが、若い頃と違ってその気持ちの中にちょっと混じり物もあります。それは、こんな趣味のものに大金を使ってしまった罪悪感や、乗りこなせるだろうかという不安みたいなものでしょうか。書類上の最終的な手続きや実車の操作説明など意外に長い納車の「儀式」を進めるうちに「まずはちゃんと家まで乗って帰れるだろうか」という気持ちがどんどん膨らんでいきます。ついにすべてが終わり店長さんが私の掌にそっとキーを置きます。「えぇぃ、行くぜ!」と自分に発破をかけつつマシンに跨がってエンジンを始動した私は家内にクルマで後から見守ってもらいつつ、ユルユルお店を後にしたのでした。
ハーレーダビッドソンとともに
晴れてリターンライダーとなった私。
その2に続く。