2011年12月22日
◆チケットゲットに、毎年、必死の争奪戦
今年も京都南座の顔見世【注1】に行ってきた。2時間パソコンに齧りついてチケットをゲットしてくれた友人と共に。
京都の顔見世と言えば、全国からツアーで来る客も多く、旅行社が席を抑えていたり、チケットが接待に使われるなどの事情から、松竹会員でもなく、休みの日しか行けない私たちのような客には、なかなか狭き門だ。もちろん、高い席が買える財力があれば、別ですが(笑)。
まあ、このチケット争奪戦自体が毎年の師走イベントとも言える。
苦労してゲットしたチケットだもの、存分に楽しまなきゃね!
【注1】顔見世とは・・・江戸時代、芝居小屋の「この一年、こうした役者の顔ぶれで興行をします」というお披露目、まさに顔見せイベントだった。時代とともにすたれ、今、顔見世といえば、京都の南座のものを指す。
◆びっくり、東京で知らずに見た顔見世!?
実は東京でも顔見世をやっていて、知らずに見たことがある。当日のチケットを求めて歌舞伎座に並んだけど、南座と違って、押し寄せるといった感じでもなく、一幕見ができるというリーズナブル感もあって、顔見世とは思いもしなかった。観終わって顔見世と聞いて、「東京にもあるんだ」と、無知な私は驚いたのだった。
それほど、顔見世といえば京都の冬の風物詩といった感が強く、京都の風情も合わせて味わうために、みんなが押し掛けるんですね。
◆“まねき”を見る劇場前の混雑も、風物詩
さて、南座についたら、まずは“まねき(看板)”見物。
芝居自体を見なくても、顔見世のために掲げられる“まねき”を見るためだけに、南座を訪れる人も多い。この“まねき”の風習が残っているのも南座だけだ。
役者の名を記す勘亭流という独特の隙間のない文字は、「大入り満員」を願う縁起物。このまねき看板を並べる順には決まりがあり、右から二枚目が色男の役、三枚目が道化役の位置だったことが、「二枚目」「三枚目」
の語源になったという。
◆様式美満載の曽我物で、寿ぐ
昼の部は『寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)』で幕開け。忠臣蔵と並ぶ人気の仇討物。“曽我物”というジャンルを形成するほど、歌舞伎の題材に多く取り入れられ、江戸中期頃からは「お正月は『曽我物』で開ける」
といわれるほど、定番中の定番になったとか。
中でも『寿曽我』(ことぶきそが)は、敵味方が相対しながら、その場は納め、「討つぞ」「討たれるぞ」の次回を約する、大人カッコイイ、シチュエーション。
曽我兄弟の兄:十郎は和事で、弟:五郎は荒事で演じられるのが決まりだが、この五郎の荒事が邪気を払う役割を担ってをり、吉例としてふさわし
い演目というわけだ。
◆幕間の楽しみは、やっぱり…
二幕目は世話物で『お江戸みやげ』。三津五郎さんのお婆さんぶり、良かったです。
三幕目は、藤十郎さんで『隅田川』。
各演目の間には20分、30分と、幕間が設けられていて、
劇場内を散策するもよし、お土産を選ぶもよし。
何より、この間に昼ご飯を食べなければ!
劇場内には、幕間に食べられるレストランも数か所。
京都の人は高島屋の地下や、お気に入りの料理屋で調達するとかで、この時期、各所で『観劇弁当』が売り出される。
大阪からの我らは、劇場内の売場で買うことに。
◆仁左衛門さんの「いやさ、お富、久しぶりだなあ」
昼の部の締めは、『与話情浮名横櫛』
(よわなさけうきなのよこぐし)
ヤクザの親分のお妾、お富さんに恋した与三郎。事が露見して、ヤクザに切り刻まれてしまう。そうして身をもちくずし
『切られ与三』として、強請、タカりの日々。
強請に入った家で再開するのが、お富。
そこで出る名セリフ「いやさ、これ、お富、久しぶりだなぁ。」
この与三郎の役を、仁左衛門さんが演じるのだから、たまらない。
続く、これまた名セリフ「しがねぇ恋の情けが仇(あだ)~」の恨み節をぶつける仁左衛門さんに、もう、うっとり。
最初の幕で出てくる若旦那風の与三郎も素敵だけど、後半の傷だらけの与三郎の悪ぶりのかっこいいこと!
よっ、松嶋屋! 十五代目! あ~、やっぱり見て良かった!
◆さて、アフター顔見世は?
昼の部は3時35分終了。鴨川沿いを歩いて、観劇のほてりをさまし、京都ホテルのバー『チッペンデール』で、顔見世乾杯と行きたいところだが、このあと、漆作家の市中さんにお話を聞く予定が!(よろしければ本サイト「聞いてみました。漆作家の艶の美学」をご覧ください。)
『チッペンデール』は、またの機会に、急ぎ大阪へ帰ることに。
というわけで、2011年の顔見世見物は、チョ、チョ、チョ、チョン!(幕)