遊民悠民(ゆうみんゆうみん)

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ありとあらゆる情報が溢れるいま、役に立つ情報が見つけにくい。
20代から60代までの「遊民悠民」メンバーが、「遊ぶ」「暮らす」「食べる」をテーマに
さまざまなモノを比較し、レポートしていきます。

あそぶ

吉田神社の追儺式(鬼やらい神事)

今日は2月3日。節分の日。京都の神社やお寺ではさまざまな節分の行事が行われます。
京都の行事といえば三大祭り、「葵祭」は勅祭=宮廷の祭り、「祇園祭」は町衆=裕福な町民の祭り、「時代祭」は市民=近代の自治組織の祭り、が有名ですが、京都に暮らす人々が季節の行事として大切にしているもののひとつが、新年(旧暦)=新春を祝う「節分~立春」です。
太陽暦が取り入れられて140年。それまで京都では1000年以上は今日が大晦日、そして明日、2月4日の立春が新年の始まりでした。太陽暦の年越しとは年季が違うのです。その京都の年越し行事=節分会の中でも多くの人に親しまれているのが、東山三十六峰のひとつ、「吉田山」にある「吉田神社」の節分会。
2月2日から3日は旧年の厄を払い、新しい年にさまざまな願いをかける人々で賑わい、境内では「追儺式」「火炉祭」といった祭事が行われます。

東一条から神社の本殿までおよそ800もの露店が並びます

露店の列は途中から左右に別れて、さらに賑わいを増します

そんな人々を迎えるのが、東大路一条(略称トンイチ)から吉田神社末社の大元宮までの参道を埋め尽くす、なんと約800もの露店。日本にいろいろお祭りがありますが、広くない境内にこんなに多くの露店がびっしりと居並ぶのは他にそう多くないのでは。
しかも、おなじみのりんご飴、焼きそばだけでなく、京都を代表する老舗が露店を構えます。
湯豆腐の「順正」、漬物の「大安」、お菓子の「聖護院八つ橋」、そばの「河道屋」…子供から大人まで、楽しい道中です。

「順正」のおいしい湯豆腐が300円でいただけます

漬物の「大安」の出店。ここだけ、この時だけの「節分沢庵」を売っています

聖護院八つ橋。本店近くの熊野神社の節分も有名です

今年の節分は昨日夕方、境内で鬼たち=厄を払う「追儺式(ついなしき)」(鬼やらい神事)を見にいってきました。

黄金四つ目の仮面を被った方相氏(ほうそうし)

吉田神社HPには「追儺式は俗に『鬼やらい』と称す。平安朝の初期より毎年宮中にて執行されていたものを、古式に則って厳修に伝承・継承されており、古の趣を現在に伝える数少ない神事の一つといえる。その儀式、大舎人黄金四つ目の仮面を被り玄衣朱裳(げんいしゅしょう)を着装し盾矛をとりて方相氏(ほうそうし)となり●子(しんし)といへる小童多数を従え、陰陽師(おんみょうじ)祭文を奏し終れば方相氏大声を発し盾を打つこと3度、群臣呼応して舞殿を一巡。最後に上卿以下殿上人が桃弓で葦矢を放ち疫鬼を追い払うのである平安京鎮護の神として、又全国の神を祀る社として、鬼即ち悪神を追い払い諸人の不幸を除いて人々の幸福と平和な生活を願うのである」と難しい事が書いてあります。

鬼に金棒、を振り回してもどこか愛嬌のある赤鬼

でも、近くに来るとちょっと迫力があります

が着ぐるみの、金棒をもった赤鬼、青鬼、黄鬼が子供たちを怖がらせながらも方相氏に退治されるという楽しい神事。多くの露店といい、鬼やらいといい、寒さの厳しい京都で、「春はすぐそこ」という心の躍りが感じられる行事で、私もすっかりはまっています。
鬼やらいをみて、ようやく厄除祈願の末社、大元宮に向かいます。その狭い、急な参道にも露店がびっしり。「鮎の塩焼き」「カバブ」「佐世保バーガー」…と匂い、湯気で参拝客を誘います。

さすが料理の神様の参道、和洋中、なんでもあります。どれもおいしそう

節分に「恵方巻き」はかかせません

熱燗もあります!

その途中にある摂社「山蔭神社」は料理の神様。節分祭の奉納元をみれば、京料理の老舗、大店がずらり。この中にミシュランの3つ星がいくつあるか数えてみるのも一興です。

山蔭神社の灯籠。奉納はかのすっぽん料理で知られる西陣の「大市」、そして祇園の「いづう」

瓢亭、菊乃井、つる家はたしか3つ星、その他にも…

さらに進むと「年越しそば」の幟が。京都そばの代表である「河道屋」の年越しそばです。

年越しそばの「河道屋」のれん会のテントです

中では炭がたかれ、みんな湯気のたつ、熱々のそばをいただきます。本当の年越しそばは節分の夜から立春の朝にかけて、一年の厄を払い、来るべき年の幸を願って食べるものですが、一晩早くいただきました。
境内の斜面に設けられたテント張りのそば処。そこで海苔とわさび(もちろん本わさびをすり下ろしたもの)だけでいただきます。600円はちょっと高いか?とも思いますが、半分はお賽銭と納得。でも、一番寒さの厳しい頃の熱々のそばはたまりません。

すりおろした、たっぷりのわさびと出汁が効いた一椀でした

露店とはいえ、テントは百人は入れそうな大きさ

少し温まってようやく大元宮に到着。この大元宮、六角形の珍しい形のお宮さんです。しかも、その中に日本中の神様が一堂に祀られており、一巡りで日本中の神様に詣でたのと同じ御利益があるという、ありがたくもコンビニエンスなお宮さまなのです。

大元宮の入り口。外国からの方も多く見かけました

ずらりと鎮座まします、日本の八百万の神々

節分祭には正面の縄を巻いた棒から神殿に行く筋もしめ縄が張られ、その棒を触ると、しめ縄を通じて厄が神殿に届き、参拝者の厄を神様があずかってくださる仕組み。そうしてすっきり新年が迎えられるわけです。

正面の縄が巻かれた棒に触って厄を落とします

参拝を終えて、これまた吉田神社節分祭の名物、数々の賞品が当たる抽せん券付厄除福豆(これが本当の福引。といっても、特等は自動車です!)と「節分沢庵」を買って帰りました。

抽選日が楽しみ。福豆をいただきながら年越しです

しかし、信心深い京都の人は、節分の間だけ吉田神社から壬生寺までの運行される臨時バスにのって狂言や新撰組で有名な壬生寺の節分へお参りに行くのです。

村井一角
 春はすぐそこ -村井一角
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