遊民悠民(ゆうみんゆうみん)

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ありとあらゆる情報が溢れるいま、役に立つ情報が見つけにくい。
20代から60代までの「遊民悠民」メンバーが、「遊ぶ」「暮らす」「食べる」をテーマに
さまざまなモノを比較し、レポートしていきます。

あそぶ

8.5mの“あおもり犬”に出会った!?

「大人の旅は欲張らない」が信条。…なんて、あまりこまめに動かないというだけなのだが。とにかく旅はワンテーマ主義。今回は以前から行きたかった『青森県立美術館』と『十和田市現代美術館』を訪ねるべく、青森に向かった。

青森県立美術館 http://www.aomori-museum.jp/ja/

◆ム―ミンとフィンランドのモダンデザイン

伊丹を発って1時間30分ほどで、雪の残る青森空港に到着。昼前にはすでに市内へ。東北新幹線で来る横浜の友人と落ち合い、まずはと目的の『青森県立美術館』へ向かった。
県立美術館では、企画展“フィンランドのくらしとデザイン”を開催中。ム―ミンの挿絵原画が展示され、その物語をとおして、フィンランドのライフスタイルを紹介するというもの。
日本でも著名な家具や食器、マリメッコ社のテキスタイルなども展示され、自然とファンタジーの国フィンランド、グッドデザインの国フィンランドが融合した多彩で楽しい展覧会だった。
「フィンランドとどこかイメージの通じた、ここ青森での企画展がいいですね。東京でやるとまた違う感じかも」とは、横浜から来た友人の感想。たしかに、自然豊かな青森にぴったりの企画展だと思った。

あおもりを走るのは「青い森鉄道」。ふむ、納得。


「フィンランドのくらしとデザイン」展は6月3日まで。

◆フィンランドの正式名称知ってますか?

この展示会で、フィンランドの正式名称がスオミ共和国だと始めて知った。自然豊かなイメージにマッチする響き…
そして心惹かれたのがフィンランド人の心の原点である神話的叙事詩“カレワラ”。900歳で生まれた不滅の賢者にして世界の創造主である老人や、男前で女たらしの若者(笑)など、登場人物のキャラクターが魅力的。友人と私は、美術館の図書室で、カレワラの本を発見。「これを探して読もう!」と、カレワラにすっかり魅了されてしまった。

帰阪後、さっそくアマゾンで入手した「カレワラ物語」

カレワラとは? http://p.tl/G_JA

◆壁大のシャガール、奈良美智の家?

常設展も素晴らしい。シャガールが、バレエ「アレコ」のために制作した舞台背景画4幕が飾られたアレコホールは、圧巻。なにしろ、一幕の大きさは9×15m。4つの壁に掛けられたビッグな背景画をホール中央で身体を回転させながら眺めると、シャガールの不思議な世界に飲み込まれるような迫力だ。
棟方志功や奈良美智など、青森出身のアーテイストの展示室も。
棟方の版画とはまた一味違う油彩も見られるし、奈良美智は、部屋風にしつらえたインスタレーションが楽しい。

青森県立美術館 コレクション http://www.aomori-museum.jp/ja/collection/

<spanclass=”fontSmall”>棟方志功http://p.tl/RplG

奈良美智 http://p.tl/nZRJ

不思議なインスタレーションにどっきり。

 

奈良美智の描く女の子が住んでいそうな部屋。

 

大人も楽しい小部屋仕立てのインスタレーション。

 

中庭?の八角堂にも奈良美智の女の子が待っている。

◆県立美術館のスター、あおもり犬

見どころ満載の青森県立美術館のスターと言えば、奈良美智による巨大な“あおもり犬”かもしれない。
階段を上り下りしてたどりつく迷路のような空間に、突如現れる巨大な犬には、驚きと不思議な感動を覚える。コンクリート壁で囲われた空間に、空を背負って下を向く“あおもり犬”は、何を考えているのだろう。いつまでも見ていたい気持ちにさせられる。

ところで、秋田犬はよく聞くけど、青森犬っているのだろうか?調べてみると、絶滅した津軽犬という日本犬がいたらしい。狩猟犬だったとか。写真や絵は出てこなかったけど、“あおもり犬”とは、イメージ違うだろうなあ(笑)。

津軽犬 http://p.tl/pBHf

巨大な“あおもり犬”。静かな表情に癒される。

 

雪の季節は、雪をかぶったその姿がまた風情があるらしい。

 

周囲をぐるり見て回れる。

雪をかぶった青森犬(ユーチューブで発見) http://p.tl/OxSC

◆一日たっぷり過ごせる美術館

時間を気にせず、ゆったり見て回ったので、結局閉館時間までいることに。美術館の傍には日本最大級の縄文遺跡(三内丸山遺跡)があり、こちらも念頭には入れていたけど、やはり欲張らず、美術館を堪能することにした。
朝、大阪を発ったので、美術館には半日の滞在だったけど、館前にははるか雪山を臨む気持ちいい広場もあり、散歩や休憩しながら一日過ごしたいなあと思った。何より連休とは言っても程のよい人出で、作品をじっくり見られたのにも満足。とても快適に過ごせる場所だ。

シンプルでモダンな外観の中は、小部屋風のインスタレーションあり、アレコホールの大空間あり、迷路のようにして行きつく“あおもり犬”のスポットありと、変化があって飽きさせない。
企画展も良かったが、シャガール、棟方志功、奈良美智といったアーティストの常設作品が、この美術館の魅力だ。私のように、この美術館目的で旅してくる人間もいるだろう。

◆アートファンにうれしい各種プログラムも充実

この美術館では、各種の普及プログラムが充実している。
アレコホールのビッグなシャガールの絵にちなみ、子どもたちにも大きな絵を描く体験の場を設けたり、高校生向けに、アーティストと出会い、一緒に作品を作るワークショップも開催している。大人向けには「西洋美術史」の講座も開催。美術館の建築レクチャーツアーもあり、アートや美術館のファンの育成に力を入れている。
また、美術館の空間を生かしたコンサートや演劇なども頻繁に開催され、開かれた、親しまれる美術館を目指している。美術館の会員になるともらえる、奈良美智の絵が描かれた会員証も魅力的だ。
私が地元客なら、絶対、メンバーになったのに…!

青森県立美術館 普及プログラム
http://www.aomori-museum.jp/ja/education/2008/#openAtelier

旅の初日は、憧れの県立美術館だけで予定終了! いざ、夜はおいしいと聞くお寿司を食べよう!と、いそいそ市内に戻ったのだった。

自然豊かな場所にある青森県立美術館。

 

早、閉館時刻。まだ明るいけど外壁のネオンサインが灯り始めた。

安里道行
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