2012年01月23日
◆500円で会える、宝船のオールスター
昨年末、紹介した文楽の初春公演。先日、実際に見てきました。
大好きな『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』が上演される二部を選びましたが、おめでたいので一部の『七福神宝の入舩(しちふくじんたからのいりふね)』も幕見※しました。
『七福神~』は30分と短いだけあって、幕見代金は500円。500円で、夢見のよいという宝船、乗り込んだ七福神と出会え、おめでたい気分が味わえる!なんともおトクな演目です。
幕が開けば舞台中央に大きな龍の頭が! その龍の頭がみるみるせり上がり、龍を舳先にいただく宝船が舞台いっぱいに現れる。船の上に並ぶは七福神。ダイナミックで辰年らしい、舞台演出です。
七福神は順に、琵琶よ、胡弓よと、芸を披露します。恵比寿様は大きな鯛を釣り上げます。気になるのは、前回紹介した、福禄寿の伸び縮みする頭が、どんなふうに活躍するのか?
なんと、長い頭に獅子頭を載せ、角兵衛獅子のマネをして踊ります。獅子頭を載せた頭を伸び縮みさせるのが、ご愛嬌。ご老人の姿ながら、えいやっと逆立ちまで披露します。
幕見席の私の周囲は、若い女性のグループ。終わった後で「面白かったね~」「福禄寿かわい~」と語り合いつつ帰って行きました。
若い人も気軽に見られる。これが幕見の良さですね。
※幕見とは:通常は、いくつかの演目を合わせた一部、二部といったチケットの買い方、舞台の見方をする。幕見は、その中から好みの一幕を、部分料金で見ることができるシステム。
◆意外なところから飛び出る狐にビックリ!
さて第二部の『義経千本桜』。狐が活躍するけれん味たっぷりの舞台で、今回はどんな演出がされるのが、ワクワクして見ていると…
花の盛りの吉野山、舞台中央の静御前が初音の鼓を打つと…なんと、太夫(舞台向かって右の床で浄瑠璃を語る人)の見台(浄瑠璃が書いてある床本を置く台)が二つに割れて、白狐が現れました!もちろん、狐を操る人形遣い桐竹勘十郎さんも、一緒に飛び出して…ビックリ!
そして白狐は佐藤忠信の姿に変わり、静御前と道行の舞を踊ります。
白狐を操る時は、白地に狐火の衣装の勘十郎さんですが、狐を忠信の人形に一瞬で持ち変える際、自らも忠信の衣装に合わせた早変わり。
忠信は黒繻子に赤の車模様。袖や裾から赤の襦袢が覗くのも、メリハリが効いて、なんとも粋で美しい。操る勘十郎さんも、グレー?の着物に
黒に金の横縞がはいった裃。人形との一体感が見事です。
◆館が沈んでいく大仕掛け。宙吊り忠信の美しい舞台
狐が化けた偽忠信も、ついに正体が暴かれることに。しかし、親(初音の鼓)を慕う子狐(狐忠信)の心情に打たれた義経は、鼓を子狐に与えます。喜んだ子狐が鼓を抱えて舞いあがって行く、宙吊りが見せ場ですが、ここでも、私が今までに見たことのない演出がされていました。
狐忠信を操りながら勘十郎さんが宙に舞うと同時に、義経と静御前のいる館が舞台の下に沈んでいきます。見下ろす桜と空だけになった舞台に浮かぶ狐忠信。桜吹雪(薄桃色の紙)を撒き散らしながら、幕となります。
なんとも美しい締めくくりに、会場は大きな拍手に包まれました。
◆展示室へGO!もうひとりの弁天様を発見!
幕間や舞台の前や後に、一階の展示ルームを覗くと、文楽や今回の演目について意外な知識も得られ、より楽しむことができます。
『千本桜~』の後に上演された『壺坂観音霊験記(つぼさかかんのんれいげんき)』。沢市お里の夫婦愛の物語で知られていますが、展示を見ると、もうひとつの霊験記が!
壺坂村の貧しい姫君が孝行のために身売り。大蛇への生贄になるところ、その孝心により、大蛇ともども昇天を果たす。この大蛇が壺坂寺の観音様、そして孝行な姫君は弁天様だったという話。
なんと、七福神の弁天様がこんなところにも…。と、ユニークな発見に得した気分になります。時間帯で、ボランティアの人が、文楽について解説してくれたり、人形を持っての記念撮影も。お時間の許す方は、その奥にある書庫で、文楽についてさらに読み知ることができます。
文楽初春公演は1月24日まででした。大阪国立文楽劇場での次回公演は4月です。
※HPの宝船は広重によるものです。
壺阪寺http://www.tsubosaka1300.or.jp/
国立文楽劇場http://www.ntj.jac.go.jp/bunraku.html
気楽に文楽(ここまで第3回)